序幕

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 (つたな)い動きで携帯を手に取ってメール通知を確認する。 (返信なしか。既読もなってねえ……レスポンスの早い奴なのに。一体どうしたのやら)  頭痛が治まってから辛うじてある人に助けのメールを送っていた。  それは仲の良い友人である。  美人の彼女もいなければ、親とも疎遠で実家も遠い。友人も大して多くない。そんな男の数少ない交流相手であった。  各々(おのおの)が住むアパートがたまたま近所であったことから交流が始まった。  友人は、根が真面目で几帳面で優しい男だった。  友人とはここ数ヶ月、不思議と顔を合わせていない。  男も気にはしていたが、仕事も立て込んでいたこともあり、会いに行くこともしなかった。  一番家が近いことを理由に援助依頼していたが返信は来なかった。仕事中なのだろうと考えて、見切りをつけた。  体は動くこともままならなかった。  それでも何とか立ち上がって、ふらふらしながら玄関の戸を開けた。
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