序幕

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 歩かなければいけなかったがコンビニまで行くことに決めた。  やけに体は熱っぽかった。  コンビニに冷えピタがあればいいな、なんてぼやぼやと考えた。  着替える余裕なんて無く寝巻姿だったが、容姿に気を遣う余裕などなかった。  お気に入りの鮭おにぎりが食べたかった。  空は曇りで過ごしやすい日であるが気分はかんかん照りの道を歩いているようで、なんとも損した気分になった。  歩けば歩くほど、まるで体中を紐で縛られるような無気力感が襲っては、渦を巻くように視界が歪んだ。  前に出す足が痺れるように重くて、気力を振り絞りながら歩いたことを覚えている。  気合一つで歩いていたが唐突に、肩にかかる熱が冷ややかになった。  あまりに唐突だった。  そのまま急速に朦朧としだして飲み込まれるように意識はぶっつり切れた。  視界のモザイクを取っ払うと、あの腐った卵の臭いが鼻を襲ったのだ。
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