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星さんはまだ決まったわけじゃないからと、それ以上のことは話してくれなかった。
でも星さんの言うようにわたしたち四人に恨みがある人がこんなことをしているのだとしても、罪もない子どもたちを巻き込むなんて許せない。
「星さん、警察に通報しましょう。犯人の車を探してもらえるかも」
「大丈夫。それはもう先輩に頼んであるから」
昨日サトシさんちに来た刑事さんのことかな。
「一昨日叶夢の家の前に止まってた車なら携帯に写真撮ってあったから。ナンバーもバッチリ」
「じゃあ昨日のうちに……?」
やっぱり星さんは凄い。わたしなんか何も考えてなかった。
「叶夢は例のおじさんて奴の顔を知ってる。犯人からしたら放っておけないはずだ。
ただ、燿子ちゃんが車の中で見た三人、昨日病院で暴れた奴、犯人は他にもいるかもしれない」
抑えられた星さんの声に背中がゾクリとする。
救急外来の処置室の前まで来ると、たくさんの人たちが集まっていた。
今朝見たばかりの学校の先生も何人かいる。不安そうに状況を尋ねている人たちは保護者の人だろう。
「あの、来島先生は……」
ちょうど通りかかった先生に尋ねれば、まだ処置室の中だと教えてくれた。サトシさんが最も容態が悪いという。
あんなに走ったせいかもしれない。違う。わたしがサトシさんの体を無茶に走らせたんだ……。
「燿子ちゃん!」
目の前が一瞬真っ白になってふらついたわたしを星さんが支えてくれていた。
「……わたしが、サトシさんを走らせたんです。すごく苦しい状態なの、分かっていたのに……」
「燿子ちゃんじゃなくてもサトシは全力で走ってたよ。そうでなきゃサトシじゃない」
きっぱりとそう言いきる星さんの声が、素直に落ちてきた。
そうだ。サトシさんはそういう人だ。たった三日間、そんなに話してもいないけれど、サトシさんが他人のために一生懸命な人だって分かる。
神様、こんないい人をどうか苦しめないでください。サトシさんを助けてください。
わたしは心の中で必死に祈った。
やがて処置室からベッドが押し出されてきた。青白い顔で横たわるサトシさんを見た途端、涙が溢れた。
絶対に犯人を許さない。
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