小学校_2

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「叶夢君、無事で良かった。心配してたんだよ。あ、わたしはサトシさん、……来島先生の友達でね、先生の代わりに……」 「……知ってる」 叶夢君はボソリとそう呟いた。 「え?」 「お姉さん、先生の『使い魔』でしょ?」 「……!」 使い魔って……。わたし魔物? 思いもかけない言葉が返ってきて面食らう。 「先生の家で見た。さっき先生が走って追いかけてきた時も。お姉さんが先生の体の中から抜け出すの」 「……それって、叶夢君は幽霊とかそういうのが見えるってこと?」 叶夢君はこくんと頷いた。漫画とかアニメにあるのかな、使い魔。ここで否定しない方がいいのかな。子どもと話すのって難しいな。 「そっか……、そうなんだ。えっと、お姉さんのこと、怖くない、の?」 無言で左右に首を振る叶夢君の瞳に、涙の粒が盛り上がる。やっぱり怖いんじゃ……。 「お姉さんは、サトシ先生に頼まれて、叶夢君を助けにきたんだよ」 叶夢君を安心させたくて、わたしはいっそ使い魔でも何でも、叶夢君が思っている存在になることにした。でも一体、使い魔ってどんなことするんだろう。 「叶夢君はお腹痛くなったりしてない? 大丈夫?」 わたしは叶夢君と目線を合わせるように少し屈んで問いかけた。 叶夢君が頷くのを見てほっと胸をなで下ろす。 「お母さんは? 一緒にいるのかと思ってたよ」 「…………」 「もしね、お姉さんが間違ってたらごめん。さっきいっしょにいたおじさん達、叶夢君や叶夢君のお母さんに酷いことしてるんじゃ……?」 「…………」 黙り込んでしまった叶夢君にどうしていいか分からず、何かもっと当たり障りない話題はないかと必死に考えを巡らせた。 「あ、それ何持ってるの?」 ふと目に付いた叶夢君の手に握られた小瓶を指さして尋ねると、叶夢君の肩がピクリと震えた。 そして叶夢君はそれをわたしに差し出して言った。 「お姉さん、これ持ってて。……捨ててもいいから」 「これ、何?」 思わず受け取ったガラスの小瓶は薬の入れ物っぽい。でもラベルは付いておらず、半透明で中もよく見えない。 「絶対、誰にも渡さないで」 叶夢君はそう言うとくるりと背を向けて走り出した。 「待って、叶夢君!」 叶夢君を一人にしたくなくてわたしは慌てて追いかけようとした。 けれど、後ろからやってきた松崎刑事に呼び止められ、振り返った時にはもう叶夢君の姿は見えなくなっていた。
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