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サトシの部屋_2
「……燿子、……燿子」
繰り返し名前を呼ばれて、重い瞼を押し開けた。窓から差し込む光が眩しい。
――もう少し寝かせて。今日日曜日でしょ。
心の中でそう返事を返し、布団を手繰り寄せた。
それにしても、なんだかすごく長い夢を見ていたような気がする。
もう少し続きを見なければいけない、そんな気のする夢だった。
それにしても眠い。
ふと、違和感を感じて無理やり瞼をこじ開けた。
横向きに寝ていたわたしの顔の前に、誰かの後頭部が見える。
誰だっけ。
わたし、今どこにいるんだっけ。
全然回らない頭で必死に考えていると、隣に寝ていた誰かが寝返りをうってこちらを向いた。
若い男性だった。
少し長くてパーマっ気のある髪。
思わず触りたくなるほど長く生え揃った睫毛。口角の上がった口許がやんちゃな印象の……
星
頭の中に浮かぶ一文字。
徐々に記憶が蘇ってくる。
はっと自分の体を見下ろした。
引き締まった筋肉に、長い腕、指。
自分の顔を手でなぞれば、ザリザリと硬い髭の感触。短い髪。
自分のものでないその体。昨日の非日常的な出来事の数々は、今もわたしが醒めない夢の中にいることを証明している。
わたしの体はどこにあるんだろう。
どうやったら元に戻れるんだろう。
何も分からない。
眩しい朝の日差しが現実へとわたしを引っ張り出す間に、星さんが目を覚ました。
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