第03話

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第03話

 友人の悟志か簡単に答えた。 「え、だってアイツわかりやすいじゃん。明らかにお前の事好きだっただろう?」 「……」  悟志の言葉に呆然としながら、目を点にさせながら、ビールを飲んでいる悟志に視線を向けることしか出来なかった。  あのキス以降から喫茶店に行けず二週間が過ぎる。  顔を出さなくなったことを心配してくれた友人の悟志が出勤帰りの夜に家に寄ってくれた事は有難く、一緒に夕食を食べながら話をしてみた。  坂宮幸に告白されたこと。  去り際にキスをされてしまった事。  すべてぶちまけ、話を終えると同時にあっけらかんと答える悟志の姿に何も言えずに居た。 「え、え、えっと、さ、悟志、それは一体どういう事で……」 「お前相変わらずニブチンだよなぁ……お前が坂宮を見ていた同様に、坂宮もお前をきちんと見てたぞ」 「……えー」 「まあ、気づいていなかったって言う事はわかってたから何も言わなかったけどな。だって楽しいし」  笑いながらビールを飲む悟志を一発ぶん殴ってしまいたいと言う衝動にかられながらも、拳を握りしめつつ何とか耐えた。  悟志が言うには、前々から気づいていたらしい。  明彦を見つめている事、それは友人とではなく、客と言う事でもなく、愛おしい人を見つめているような視線をしていたと、悟志は語る。  彼の言う通り、そんな事全く気付いていなかった自分にひどく落ち込んだ。  明彦は幸の事が自覚はなかったが好きだったのだと思う。  だからこそそのような視線を送っていたのかもしれないと言うのはわかっていた。  しかし、まさか逆があるなんて思っていなかった明彦は酷く自分を恨んだ。  缶のビールを飲み終えた悟志は明彦を見る。 「で、どうしたんだ?」 「……断った」 「お前、坂宮の事好きだったんだろう?」 「うん……多分ね」 「じゃあなんで断るんだよ?」 「……そりゃあ、まあ、琉翔の事もあるし」  明彦は琉翔が居る部屋の扉に視線を向ける。  彼は今宿題中で部屋から出てこない。  幸の告白を受け入れなかったのは、琉翔の事もあるし、そして雪の事を思って断った。  缶ビールを一口、喉に通らしながらため息を吐く。 「だって、俺もうすぐ三十路だし、おじさんだし、しかも男だし……それに今は琉翔を立派に育てたいから、恋愛みたいなことはする気持ちにもなれなくて」 「おいおい明彦」 「俺よりもっといい人に出会えると思うんだ。坂宮くんまだ若いんだしさ」  歯を噛み締めるようにその言葉を答えるが、それは明彦の本心ではないと悟志はわかっている。  
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