第03話

6/8
69人が本棚に入れています
本棚に追加
/26
「……二人とも、おはよう。父、悟志、どうした?」 「いや……これは仕方ないんだよ琉翔」 「そ、そうなんだよ琉翔。お酒を飲みすぎただけだから……」 「確かに顔が酷いな二人とも」  あっさりとそのように答える琉翔は頭を押さえている二人を数秒見つめた後、冷蔵庫まで行きペットボトルのお茶を少し飲んだ。  琉翔は悟志がフライパンを持っているのを発見する。 「悟志、何か作ってくれるのか?」 「ああ、和食……なんだ琉翔、手伝ってくれるのか?」 「手伝いたい」 「よし、じゃあ卵を二個とめんつゆ出してくれるか?」 「了解した」  目をキラキラさせた様子で琉翔は再度冷蔵庫を開け、言われた通りのものを用意しようとしている。  その間に悟志と明彦の二人は二日酔いの薬を飲みながら、冷蔵庫で言われたものを取り出そうとしている琉翔の姿に視線を向けた。 「琉翔、ますます明子ねーちゃんに似てきたな」 「……うん、そう思う」 「……そう言えばもうすぐ命日だな」 「……」  悟志の言葉に明彦は口を動かす事はなかった。  佐藤明子(さとうあきこ)――それが明彦の死んだ姉の名だ。  彼女が突然居なくなってしまったのは、今でも覚えている。  事故に合う前日までは琉翔の事、明彦の事を心配する事を話したばかりだった。  琉翔も突然両親を失った事により深く傷つき、一人にさせたくなかったため明彦が引き取った。  悟志の言う通り、もうすぐ命日だと思い知らされる。  未だに突然扉が開き、「やっほーあきひこー」と笑顔で挨拶に来るのではないだろうかと思ってしまう。  それは、悪友でもある悟志も同様だった。 「今でも信じられねーよ。明子ねーちゃんが居なくなっちまったなんて」 「……俺も、そう思う」 「……悪いな、明彦」 「なんで謝るんだよ悟志。俺はもう大丈夫だし……」 「……」  悟志の謝罪は、明子の事を突然話した事だ。  彼は知っている。  あの時琉翔以上に深く傷ついた人物の事を。  傍にいないと間違いなく壊れてしまうのは琉翔ではなく、明彦だという事を。 「悟志」  声をかけられたのはそんなことを考えていた時だった。  言われたものを持ってきた琉翔の目は相変わらず綺麗な瞳だった。 「持ってきたぞ」 「おお、ありがとな琉翔……それと明彦、米ねーぞおい」 「え、マジか……じゃあこの前買ってきたレンジでチンするやつのがあったから――」  先ほどの表情とは全く違う顔を見せる明彦の姿に、悟志は少し安堵してしまったなどと、言えるはずがなかった。
/26

最初のコメントを投稿しよう!