第02話

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第02話

「父、明日友達の直紀君の家に泊まってもいいだろうか?」  夕食の支度が終わり片づけをしている時、琉翔が何かを思いついたかのようにしゃべりだした。  琉翔には直紀(なおき)と言う友人がいるらしく、その子の家に泊まりに行ってもいいだろうかと話をしてきた。  突然の内容だったのだが、明彦にとってはそれは好都合だ。 「明日って事は金曜日だよな。土曜日は休みだし、俺は別に構わないが、寧ろ泊まってくれるのはありがたい」 「ありがたいのか、父?」 「実は明日同僚が寿退社をするんだよ。それで飲みに誘われてたんだが……母さんに頼もうかと思ってたんだが、お前が友達の家に泊まるんじゃ助かる」 「じゃあ行ってもいいのか?」 「ああ、許す。その代わり向こうの家には迷惑かけないようにな……直紀君のご両親にもちゃんと連絡しておかないと……」 「それならおばさんから許可をもらっている」 「流石お早いねー」  キリっとした表情で答える琉翔は本当に子供なのだろうかと疑問に思ってしまうほど、しっかりした人間に育ってくれた。  まだ一緒に暮らして数年の月日しか流れていないが、明彦に迷惑をかけないように気づいたらすぐに手伝いをしてくれたり、勉強もサボったことはないため成績優秀。本当にしっかり者に育ってくれた。  しかし、明彦にとって一つだけ心配ごとがある。  琉翔があまり本心を語らないと言う事。  笑った顔もあの事故以後見た事があまりなく、無表情で人形のような、まるでお面をかぶっているのではないかと言うぐらい、彼は笑う事がない。  そして明彦に遠慮している様子も見られていたので少し心配だったのだが、友人の家に泊まると言う事は明彦にとってはとてもいいことだ。すぐに賛成した。  因みに寿退社の人が居て飲み会に行くと言うのは本当である。ちょうど母親に連絡する予定だったため、安堵の気持ちになる。  泊まりについて返事を返した後琉翔の表情が微かに変化したように見えたのは気のせいではないと思いたい。明日のお泊り会と言うものが出来て少しだけ嬉しいのか、頬を赤く染めている姿が目に映った。 「琉翔、楽しみか?」 「うん」 「そーか、良かったな」 「……ありがとう、父」  思わず頭を撫でてしまったが、琉翔は拒絶することなく笑顔はなかったが、静かにお辞儀をしながらお礼を軽く述べた。  *  次の日の深夜、明彦は暮らして居るマンションの近くまで歩いてきたのは良いのだが気持ち悪くて電柱にしがみつきながら片手で口を押えた。
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