冷たい指先と涙味のキス

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「これじゃ、また言い回しが悪いというか、聞こえが悪いね。下手くそ。これも訂正!」  不意打ちで、天使のような微笑みを見せ、ハキハキとした朗らかな、明るい瞳の色で、熱心に()()きと夢みたいなことを言った。 「その指は、その一瞬、時を超越している。感傷や郷愁も超えた未来に(つな)がる音色だよ」  (あおい)は何にも分かっていないと(しゅう)は感じる。どんな背景があるかも何にも知らないから。綺麗な心を前にして、自分は(けが)れていると、思い知ったようで唇を噛み、曖昧(あいまい)な薄笑み。 「先生と貴方にしか弾けない響きだからね。そんな一も二もない感動的で、特別な場面に出会えたってことを、とても嬉しく思うよ」  (いま)だに彼は過去に(しば)られていて動けない。その古傷が時間が経って治るとも思えない。()瀬無(せな)(まぼろし)はどこか空に()げたいくらい。  衝動のままに愛なんか(ささや)かず、暴れ回り、突き飛ばして押し倒し、何もかもを奪って、傷付け合うだとか欲求の次元もスッ飛ばし、二人していっそ、動物になってしまいたい。この世界には感情のない(けだもの)なんていないか。ロボットになりたいと狂おしく一心に思う。
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