436人が本棚に入れています
本棚に追加
「これじゃ、また言い回しが悪いというか、聞こえが悪いね。下手くそ。これも訂正!」
不意打ちで、天使のような微笑みを見せ、ハキハキとした朗らかな、明るい瞳の色で、熱心に活き活きと夢みたいなことを言った。
「その指は、その一瞬、時を超越している。感傷や郷愁も超えた未来に繋がる音色だよ」
葵は何にも分かっていないと愁は感じる。どんな背景があるかも何にも知らないから。綺麗な心を前にして、自分は穢れていると、思い知ったようで唇を噛み、曖昧な薄笑み。
「先生と貴方にしか弾けない響きだからね。そんな一も二もない感動的で、特別な場面に出会えたってことを、とても嬉しく思うよ」
未だに彼は過去に縛られていて動けない。その古傷が時間が経って治るとも思えない。遣る瀬無い幻はどこか空に投げたいくらい。
衝動のままに愛なんか囁かず、暴れ回り、突き飛ばして押し倒し、何もかもを奪って、傷付け合うだとか欲求の次元もスッ飛ばし、二人していっそ、動物になってしまいたい。この世界には感情のない獣なんていないか。ロボットになりたいと狂おしく一心に思う。
最初のコメントを投稿しよう!