あとがき

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あとがき

11か月の執筆、全14話(約55000)字の『また、あした。』完結いたしました。 最後まで、お付き合い戴いた皆さま、有難うございました。『完結』と申しましても同時に『始まり』と申しあげたい物語。如何でしたでしょうか……? 本作の執筆にあたり、常に脳裏にあった心配事は、実際に今、病と闘っておられる方が、万が一にも御覧になって不快に思われはしないかと言う事でした。私も健康診断で「心臓が弱い?」と言われたことがあり、結果的には肋骨の位置が悪く差し込むための痛みと診断されましたが、心臓病が感情移入できそうな大病ということで取り上げたのです。不謹慎に思われたら、本当にごめんなさい。 『手術』という言葉を出すために初動処置、手術方法、検査を含めて掛かる入院日数、経過、リハビリなど調べていく内に、これは当事者の方が目にされたら空々しく思われるに違いないとセンシティブな表現を避けつつ神経を使って描きました。言い訳じみていますが、上っ面だけの描写の理由はそこにあります<(_ _)> タイトルの『また、あした。』は普段、何気なく口にしているけれど、身も心も健康でないと言えないなって、実は贅沢な言葉だよなって思ったんです。 私の執筆はライヴみたいなもので(;^ω^)、いつもプロットをざっくりとしか立てない、あるいは立てても変化していくのですが、頭とラストだけは最初に決めた通りが常……。本作では、ラストシーンで海晴が、どんな顔でどんな声のトーンで颯介に「また、あした」を言うだろう?と、その表情がくっきり見えてくるのを楽しみながら彼の気持ちに添うて参りました。 思いがけず、7/25付の新作セレクションに挙げて戴いたことで沢山の方に読んで戴くことができ、その心の数だけ海晴の「また、あした」が有るのだと思うと、ワクワクソワソワと嬉しい私です(*´▽`*)作品って、こうして育っていくのですね……、有難うございます♡ ところで、リンドウの花言葉は幾つかあって、須崎が海晴に贈った紫のリンドウには健康への願いが込められ、颯介はかつて『勝利』の花言葉を愛し、須崎作の『紫紺の華』には蕾のリンドウが、海晴には『あなたの悲しみに寄り添い慰めたい』という青いリンドウが贈られるなど本作には色、形状の異なるリンドウが登場します。また『竜胆』と『瘧草』の表記の違いで須崎の心理を匂わせるなど、端々で言葉のチョイスを楽しんでいます。 第6話で颯介からの青いインクの感想メモにあった『キミは泣いてばかりいる、どうして?』が、颯介が海晴に心惹かれた最初だったんですよね……。 とても地味なところで、3つの『蒼・碧・青』の連続と『シャガール・ブルー』『ダイビングの看板』『青朽葉色のリブニット』『シーフード』から『青春』を意図する『あお』に行きつくまでブルーに拘ってみたり、脇役の名前の頭をとって四字熟語にする仕掛けも自己満足的に楽しんでしまいました(* ´艸`) 朝井くん、雲谷くんは海晴の文芸部仲間、暮沼曇天は海晴作の小説の作中人物、雨宮くんはクラスメート……この4人の名前の頭の文字を登場順に繋ぐと、最後に須崎先生からの手紙にあった『朝雲暮雨』になります。ざっくり言えば『情交・情愛』の事ですが、楚の懐王が昼寝の夢の中で巫山の神女と情を交わし、別れ際に神女が「朝には雲に夕には雨となって参りましょう」と言ったという故事に由来する言葉です。 颯介と海晴が末永く寄り添い幸せでいられますように……そんな願いを織り込むように物語に忍ばせてみました。気付かれた方おられるかな?いらっしゃると嬉しいな……(〃艸〃)ムフッ 『また、あした。』の表紙はTwitterで親しくして戴いているアガさん(@ag66000)に戴きました。実は2年前にアガさんがツイートされた絵に惚れ込んだ私が本作を執筆するにあたり、海晴という人物像に自然と当て嵌めて思い描いていた絵なんですよ。そこで思い切って表紙に欲しいと願い出ましたら、本作用に仕上げてくださり、嬉しい共演となりました。 そして、紅とさま(@n3X35)からは執筆中盤の頃「須崎先生が高校生だった頃の本心が知りたい」とリクエストを戴き、SSでお応えしたことがあります。後日、そのSSに色彩の柔らかなとても素敵なイラストをくださって、そちらでも光栄な共演が叶いました。折角なので多くの皆さんにも見て戴けたらと、個人サイト『Attic.』に挙げましたので、良かったら覗いてみて下さい。 https://attic-star.work/ 13話の須崎から海晴への手紙で《自分の為に守りたいもの》とある時点で須崎自身、自分でもその何たるかを意識しています。須崎も前を向いています。彼は初めて《自分の為に守りたい》と思った海晴を颯介に託すことになりましたが、それは後ろ向きな感情ではなく、最後の最後まで好きだった人のその時々の『大事な一番』を尊重する……、それもまた須崎にとって自然な心の機微だったのではないかと私は思います。きっと、笑みを浮かべて神奈川へ赴任し、この守るばかりだった男がひょっこり守り愛される喜びを、その新しい感情を得るかもしれません。そんな想像を抱かせてくれた(たぶん須崎ファンのw)紅とさまと素敵な共演をさせて戴き、心から感謝申し上げます<(_ _)> エブリスタ様では後書きを出したあと、一旦、削除していたのです。それは、後書きに頼らないといけない作品ではいけない気がしたのが一つ、作中に全ての意味や仕掛けの記述があり、読み手の想像の自由まで奪いそうな説明過多は不要という判断からでした。けれど逆に、言葉のチョイスで引っ掻き回しただけの作品に思われはしないか、素人物書きの文章で仕掛けの意図がちゃんと伝わるだろうか、実は伝えたい!という思いもあり(;^ω^)改めて、後書きを書き直しました。それに『また、あした。』という挨拶の重み、やっぱり、そこを皆さんと分かち合いたかったというのもあります……。 長い後書きになってしまいました(;^ω^)最後まで読んでくださった皆さま、本当に有難うございました。                     宙水
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