蓼喰う、喰わず。

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「なに俺抜きで先に飲んでんだよー」 スマホから漏れ聞こえてくる楽しそうな笑い声に口角が上がる。 「たで」がどんな味かなんて知らないし、知りたくもない。どうせみんな似たようなもの食ってんだろ? 俺が今食べてる物だけがそれかもしれないだなんて、トリビア中のトリビアだ。まさに無駄。 あぁ、はやく馬鹿話をしながらビールが飲みたい。手元でカチャカチャと音を立てていた鍵をくたびれた皮のケースごと尻ポケットにねじ込んで駅に続く道を急いだ。
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