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向こうからすれば救世主だったのか、それとも燃え盛る炎目掛けて飛んできたただの虫だったのか。
なんだかめんどくさいことになりそうだと手をひこうと思っていた俺に飛び込んできたのは、彼女の親父が社長だという情報だった。社長とはいえ中小企業の雇われだからそこまで実権はないらしい。でも逃げ場を求めていた俺には甘い匂いのするネタだった。
愛してなんかなくたって抱けるくらいには嫌いじゃない。友人に言わせればちょっとマザコン気味らしいくらい優先してる俺の母親ともうまくやっている。
まさに、手を打ったのだ。
俺は彼女の親父さんの会社に転職した。そして当然結婚した。社長の娘婿という立場は職場での風当たりは強かったが、どうでも良かった。仕事は器用にこなせたし結局はバックの権力がものを言うのだ。
しばらくして娘も生まれた。子供は嫌いじゃなかったから嬉しかった。でもそれ以上に、これからは二人きりじゃなくなるんだということに猛烈に感激した。
こいつの興味や関心が俺だけに向くことがなくなったことに開放感を覚えた。
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