蓼喰う、喰わず。

世の中の夫婦のどれくらいがお互い向きあっているのだろうか。少なくとも俺らが真正面から向き合ったのは結婚式の誓いのキスが最後だったかもしれない。まぁ、それだってした「振り」で唇なんて重ねなかった。

それでも。向き合ってなくても。同じ方向を見ていればそれで成り立つのが夫婦なのかもしれない。よそ見をしていようが惰性であろうが、進む方向を変える気がなければ、夫婦は夫婦という形のまま流れていく。

きっと向こうも同じように思っている。子どもと向き合っていれば俺が何をしていても気にならない。俺がほかに遊んでいる女がいることだって分かっている。そこまで馬鹿じゃないはずだ。