う○こしていただけなのに

7/9
前へ
/21ページ
次へ
「朝、学校行く時……家が静かだったんだ」 家の外で片付けでもしてたのかなと思ってた、と、その時の違和感を口にすると、ヒロキは沈んだ表情で手にした紙をシンタに見せた。 「テーブルに、こんなのが置かれていた」 「……」 紙は折りたたまれた特売のチラシだ。 裏には、文が一行── 『私も行きます。探さないで サトミ 』 後半は家出のテンプレ( 決まり文句 )じゃないか──と思っても、さすがにヒロキの前では口にしない。 精一杯、とぼけてみせた。 「……意味わかんねえ」 「……」 ソファに力なく腰を下ろしたヒロキは両手で顔を押さえ、髪をかきあげる。 沈む父親の姿を痛ましい気持ちで見つめていたシンタは、壁の時計に目をやり、紙に書きなぐられた文字に目を落とした。 ……母ちゃん、バーゲンにしては遅くねえか? 変な雰囲気かもしてないで、早く帰ってこいよ。 父ちゃんこんなにしょげてんぞ。 一体、どこで、何してんだよ……?
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加