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「朝、学校行く時……家が静かだったんだ」
家の外で片付けでもしてたのかなと思ってた、と、その時の違和感を口にすると、ヒロキは沈んだ表情で手にした紙をシンタに見せた。
「テーブルに、こんなのが置かれていた」
「……」
紙は折りたたまれた特売のチラシだ。
裏には、文が一行──
『私も行きます。探さないで サトミ 』
後半は家出のテンプレじゃないか──と思っても、さすがにヒロキの前では口にしない。
精一杯、とぼけてみせた。
「……意味わかんねえ」
「……」
ソファに力なく腰を下ろしたヒロキは両手で顔を押さえ、髪をかきあげる。
沈む父親の姿を痛ましい気持ちで見つめていたシンタは、壁の時計に目をやり、紙に書きなぐられた文字に目を落とした。
……母ちゃん、バーゲンにしては遅くねえか?
変な雰囲気かもしてないで、早く帰ってこいよ。
父ちゃんこんなにしょげてんぞ。
一体、どこで、何してんだよ……?
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