序章

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同日、S県某市―― いそいそと釣り道具を出してきたシゲオの様子に、マサコは嫌な予感にかられて聞いた。 「お父さん、今からハルと孫のチトセが来るんですよ」 「今日は出かけるぞい」 「え」 「さっき、トモミツから連絡があってな」 孫と遊びに行く時よりも、ずっと身支度の早いこと――マサコは困った顔で、 「でもお父さん、一緒にネズミーランドへ行くって約束だったじゃないですか」 「母さん、すまんが今日は三人で行きなさい。ハルとチトセには美味しいものでも」 いや、行くんはネズミーランドっちゃ。 津々浦々から人寄りおるし、死ぬほど散財させられるに決まっとろう―― 話を半分以上聞き流されたと気づかないシゲオは、表情明るく出かけていった。
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