○○○していただけなのに

う○こしていただけなのに

「お前、日焼けした？」
席についてほどなく、クラスメイトのマッチョイことマツイにそう聞かれ、シンタは「わかる？」と応じた。
「昨日一日、裸でベランダに寝てた成果。すげーだろ」
「気持ち悪」
嫌そうに顔をしかめたのは、隣の席のアオイだ。
「ムキムキになってさらに日焼けって、あんたどこ目指してんのよ」
「んー、今のところ二段？」
ボケるでもない馬鹿正直な答えがきて、アオイは小さく「つまんね」とつぶやいた。
丸刈りなんだからさ、どうせならチョコボールかリネールとかオリバとか言いなよと内心付け足したのは秘密だ。

「はよー」
よろよろと浮かない顔のミナミがやって来た。
「ミナミ、どした。また夜更かし？」
「もあるけどよ」とライトブラウンの髪をかきあげ、
「起きたらマザーがいなかったんだけど」
「トイレじゃね？」
「いや、おれもトイレ入ったけど、後にも先にもいねーんだわ。朝飯は作ってあったけどさ」
今朝のオレんちみたいだ、と一瞬頭をよぎったが。
「健康のためにジョギング始めたんじゃないの？」
「お前らしい発想だな、シンタ。マザーどんだけ動くの嫌いか知ら」
「おーい、みんな。席につけー」
担任のミスターシマノがやって来て、シンタたちの話は自然と打ち切りになった。

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『リネールとかオリバとか』……
かたや国際大会148勝中（2019年7月現在）の柔道家、
かたやのちに本人の名を冠したポーズを生み出した伝説のボディビルダー。