5人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
米国マルシア州。人口は多くはないが、自然に恵まれ、治安が良い。
有名な大学もあり、日本では日本人留学生が多いことで知られている。
マルシア州警察に勤めるグッドマン家は、ホームステイで日本人大学生、湯舟貴利を迎え入れた。
グッドマン家の夫リックは、マルシア州警察で警部補をしている。
一昨年、妻が他界した。
「あの年は、水不足になって水道が夜だけ断水したんだ。やっと雨が降った日、近くの川を見に行って、足を滑らせて亡くなった」
リックは自宅に、貴利だけがいるとき話した。貴利は、川と墓地の場所を教えてもらって、献花してお参りをした。
貴利にとっては、前妻の死の話も、お参りもホームステイ初日のことだ。
昨今、世界的な気象異変が問題になっている。一昨年、水が豊かな米国マルシア州で、雨が降らず、住民が困っているのは、日本でもニュースになった。
リックは去年メリサと再婚した。五歳になる娘のエマがいる。
***
湯舟貴利は、ホームステイ当初は、ややたどたどしい英語だった。最近は、どんどん上達していが、多少マルシア州なまりもある。
湯舟貴利は、グッドマン夫妻の許可を得て、日本のテレビ番組を一日遅れで米国で配信する、ケーブルテレビ局と契約した。
マルシア州警察に勤めていることを、夫リックはやけに自慢していた。貴利や家族にマルシア州警察の警察手帳を、得意げに見せる。
「リックさん警部補なんですね。触っても良いですか?」
「タカトシ。オーケーだぜ! それから俺のことは、リックと呼んでくれ」
湯舟貴利は、手帳を見つめてから、リックに返す。
「タカトシ、どうだい本物の警察手帳の感想は?」
「え? 触れる機会などないので感激しました」
「警部補だぜ、タカトシ警察の階級に詳しいんだな。警察に興味があれば、何でも聞いてくれ」
最初のコメントを投稿しよう!