【遊園地ランデブー】

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*** 美奈も来てくれて、他に男女が二名ずつやってきた。計七人で遊園地へ向かう。 某大型テーマパークのように、何かに乗るのに何時間待ちなどない、実に平和な遊園地だ。次から次へと乗り物に乗るのだが、その度に女子は橋本君の隣をねだった。なんとなく順番でそれをやっている間はよかったのだが、少し喧嘩染みて来ると──。 「──満島」 やだん、橋本君が呼んでくれる! 「──うん」 橋本君のたった一言で、女子は大人しくなる。しかもさすが王子の行動なのか、なにげなく手を出してくれるのだ。私は恥ずかしく思いつつも、差し出された手に自身の手を乗せる。もっとも手の平を乗せるのは気が引けて、そっと指先だけを重ねる。美奈がにやにや笑っているのが判る、余計に恥ずかしい。 ジェットコースターに乗り込む、一周回って戻って来て、速度が落ちてきて横に座る橋本君を思わず見た──すがすがしい横顔に、図らずも胸はときめいた。 ちょっとした休憩代わりに、私達はアーケードゲームに興じる事にした。メダルゲームやUFOキャッチャーなんかもあるけど、チーム戦で戦えるボールゲームなんかもある。 童心に返ってしばらく遊んでいると、ふと催す。 「あ、ごめん、ちょっとトイレ」 美奈にそっと耳打ちして、トイレに向かった。 トイレの表示がある場所へ入ると、左右に男女が分かれている。右が女性用だ、そちらに向かおうとした時、乱暴に左右の二の腕を掴まれた。 「──え」 「大きな声を出すな」 野太い男の声がした、日本語だ。右の二の腕を掴むその手にきらりと光るナイフが見えた、押されるように、男子トイレに連れていかれる。 「いや……!」 思わず出た声は、男のごつい手に塞がれる。
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