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【ボディガード】
結局、昨日はそのままお開きになってしまった。
美奈から散々メッセージが来ていたけど、既読もつけずに放置していて……翌朝、朝食を終えた頃、インターフォンが鳴った。
応対に出た母の戸惑った様子を不思議に思いつつも、私と父はのんびりテレビを観ていた。
「里帆、なんかイケメンが、あなたに用があるって来てる」
母がほぅ、とため息を吐きながら言った。
「はい? イケメン?」
私の問いには答えず、母はエプロンを外し、髪を撫でつけながら玄関へ向かった。私も後を追う。
母が開けたドアの向こうにいたのは、カルロと、スーツを着た女性と、長身のカルロと同じくらいの身長の日本人男性だった。
その男性が、私達を見て、黒縁の眼鏡の奥の瞳が人懐っこく微笑んだ。
「え、なんで……」
「やだ、里帆の知り合い!?」
母が大きな声を上げる。
「うん、カルロさんは、その、クラスメートの保護者代わりで……」
もちろん親には、襲われた話などしていない。大怪我でもしたのならば話すべきだけど、余計な心配はかけたくなかった。
「満島さん、昨日は大変でしたね」
カルロが笑顔で言ってくれた。
「いいえ、あの……」
「昨日って!?」
母の興奮した声は無視した。
「ご迷惑をおかけして……」
「いいえ、それはこちらの言葉です」
カルロが深々と頭を下げると、母は「まあ!」と声を上げた。
「満島さんが狙われているのは確実と判断し、警察に保護を依頼したのです。我々では人数が限られており殿下の警護が精一杯ですし、満島さんは日本人ですので、その方がよいと言う事で──」
「そこからは俺が」
隣に座る男性が手を上げて発言する。
「その警護を請け負った、相原良太と言います、よろしくね」
男性は上げた手をそのまま振って、挨拶してくれた。
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