【ボディガード】

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父が奥から出てきて、事情を察したのか上がるように勧めてくれた。途端に母は、 「ちょっと待って、2分待って!」 と家の中にバタバタと消える、しかしカルロ達を待たすのも悪いので入ってもらった。 2分待っての意味はすぐに判った、母はリビングから見えるダイニングテーブルを上に残っていた物を、一切合切キッキンに放り込む。 一応それを配慮して、ダイニングは背になるソファーに三人を案内する。 もっとも女性は、日本人男性の後ろに立つ。 「改めまして、俺は相原、良って呼んでね。この女はナナ。厳密には、俺達は私設の警備会社の者になります、正式に警察が警護するには、やはり国際問題に発展する可能性があるし、きっと物々しい警護しかできないと思うんだ」 「警護? 一体なにが?」 父が聞いた、もっともの質問だ。 「私はセレツィア王国の近衛の者です」 カルロが綺麗な日本語で自己紹介する。 「あのセレツィア? 地中海の宝石とまでは言われる?」 「はい、そのセレツィアです。前国王の子息が星林栄和学院に通っており、満島さんと懇意にさせていただいております」 「まああ、そうなの!? 里帆、言ってよ、王子様と仲良しだなんて!」 母が紅茶を出しながら言う。 「うーん、まあ……」 「王子と言っても、現在セレツィアは政情不安でして、殿下は国に帰るメドすら立っておりません」 「まあ……」 途端に意気消沈した、失礼だよ! 「確か、前国王様は体調不良だとかで、すぐに次の王様が即位されていましたね。前国王はまだお若いのに次の方が立つのも早すぎる印象ですし、現国王様にはよくない噂も……」 新聞を読む父は、少しは詳しいのかも知れない、カルロは頷いて肯定した。 「現国王に肩入れする者の仕業だと思われます、フィルベール殿下は命を狙われておりまして、命からがら日本までやってきたのです」 あ、少し脚色? 「それに、満島さまも巻き込まれてしまいまして」 「まあ!」 母が大袈裟に驚く、やめて、恥ずかしい。 「捕らえることができた何人かの賊は日本の警察に引き渡しましたが、皆一様に金で雇われた、理由は知らないの一点張りです。これで終わりとも判りません。本来ならば我々が警護をしなくてはならないのですが、圧倒的に人数が足りません。そこで日本の警察にお願いしたところ」 「俺達が派遣されました」 相原さんが、好きなアイスは何?くらいの明るい笑顔と声で言う。 「自宅やその周辺ではこのナナが。校内では俺がいるから、安心して。あ、俺、星林の卒業生なんだ、校長や教頭とも旧知の仲でね、ちょっと我儘言わせてもらった」 事務員として雇ってもらったと笑顔で教えてくれた。 「本当に娘が?」 父が聞くと、カルロが頷く。 「はい、残念ながら。ただの脅しならばよいのですが、万が一──」 死、と言うこと? 思わず息を呑んだ。さすがにまだ死にたくない! 「よ、よろしくお願いします」 言うとカルロはにこりと大人の笑みで応えてくれて、相原さんは「ほいほーい」と返事をしてくれる、ナナさんは、無反応だった、う、少し怖い!
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