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それから数日、毎日ナナさんや相原さん──良の姿を見た、そのお蔭か、怖い目には合わずに済んでいた。
そして、金曜日。学校から帰宅すると母が興奮気味に出迎えてくれる。
「里帆! あなた何したの!?」
心当たりがありすぎて、私は返答に困る。
「アメリカの新聞社から、取材の申し込みですって! お受けしますって言っといたわ!」
「ええ!? 何を勝手に……!」
何故取材を受けねばならないのかも判らず、でも心当たりはあるもので、私は妙な吐き気を覚えた。
きっとフィルの関係だろう。アメリカは、先代の王位継承の時、王太子だった方が亡くなった場所だ──。
*
日曜日、私は横浜駅の喫茶店に来た。
母も一緒に来ると言って聞かなかった、そもそも私は未成年なので、取材の依頼を仲介してくれた人も、同席を依頼したらしい。
仲介してくれたのは、私が小説を投稿しているサイトの運営会社だ。小説を書いた人に興味がある、と言われたらしい。
こんな事、よくあることなのかな……って、母に私の趣味がバレたし。母にいろいろ聞かれたらどうしようかと思ったけど、それよりもいきなり外国からの取材と聞いて意気揚々だった。このまま世界デビューかとまで思っているよう。
デパートの喫茶店に向かう。今日もちゃんと、良とナナさんが来てくれている。恋人の振り、なのかもしれないけど、なんせふたりは目立つ! だからか全然隠れる気配もないのは、むしろすがすがしくすら感じる。
店の入口で待ち合わせだと伝えた。
「デイリー・ニューヨークの方と待ち合わせをしてます」
「はい、こちらです」
女性店員に、一番奥まった席へ案内された。
若い日本人女性と金髪の年配の男性が並んで座っていた。私を見て、すぐに立ち上がる。
「初めまして、リンさん?」
女性が手を出す、年齢も聞いているのか、それはまっすぐ私に出されていた。私はそれを握る。
「はい、初めまして」
言うと母はにやにやしている、だってずっとペンネーム教えろってうるさいんだもん、それを無視していたのにバレてしまった。
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