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そしてさほど広くないリビングに、総勢15人が揃う。
母には帰ってもらった。
フィルにカルロと、増田さんにカーライル、良とナナさん、そして私と──フィルの世話係の人が皆に紅茶を出して、他のお付きの人達と、フィルたちの背後に立つ。
「さて、会話は日本語にさせてもらおう。増田さん、通訳はお願いします」
増田さんは小さく頷いた。
「カルロ、さっきの話したように、こちらは新聞記者の……」
良は名前までは知らないらしい、カーライルに目配せした。
『デイリーNYのジョナサン・カーライルです』
「……デイリーNY……」
カルロが呟く。
『ご存じで?』
カーライルは身を乗り出して聞いた。
『──20年前、エタン殿下の復権に貢献して下った記者の方が働いてらした新聞社と……』
わ、カルロは英語も喋れるんだ! すらすらとよどみなくカーライルと話している。
『Yes。ティモシー・マックイーンは、15年前に山奥で遺体が見つかりました』
『──山登りに趣味が?』
『聞いてませんね』
カルロが溜息を吐いた、哀しげな顔で。
「その、デイリーNYの方が、何故日本に?」
「里帆ちゃんが書いた小説が気になったらしい」
「小説?」
カルロの言葉に、皆の視線が一斉に私に集まった。私はもう言い逃れはできないと、自分のスマホを出してそのサイトにアクセスする。
「名前は全然、ペンネームなんですけど……」
マイページを表示させたまま良に手渡した、良はそのページを一読してから、隣のナナさんは飛ばして、増田さんに渡す。
いやーん、恥ずかしいよぉ。
カーライルもちらっと見たけど、日本語は判らないからだろう、すぐにカルロに渡る。
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