【ボディガード】

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「──済みません、日本語の読み書きは不得手です」 カルロが申し訳なさそうに言って、スマホをフィルに渡す。 あ、いや、そんな、見ないでー! 「『アイゼレス王国物語、奪われた王家の印』」 ひぃ、フィル! 読まないで、恥ずかしい! 「アイゼレス王国……」 カルロが繰り返す。 「あの、一応、逆から読んでみました」 セレツィアはSeleziaと表記されるから──カルロはああ、と言う顔になる。 「──もみ合いしているうちに、そのナイフは皇太子の胸に」 更に一文をフィルが読みあげる、やめてー!  「──ナイフが胸に……ユルリッシュ様の話ですか?」 私は顔も見れないまま、うんうんと頷く。 「なるほどねえ」 良は自身のスマホを見ながら声を上げる。え、あの一瞬で覚えて、検索したの!? 「まんま、今のセレツィア王国の話じゃない。名前は全部変えてあるけど、マルグテ夫人がナルクテ夫人じゃバレバレだし、しかも誰も口にしようとしない事実が語られている、でしょ?」 相原さんの言葉に、カルロが頷いた。 「月日が経ったこともありますが、ユルリッシュ様の事を語るのは、少し禁忌のような雰囲気はあります」 エタン殿下が着任されてから、ずっとだったらしい。 「あの、でも私はネットで調べたら出てきたことを、書いただけで……」 まあ実際にはユルリッシュ様は、ナイフじゃなくて射殺だったらしいけど。その辺は演出で。 「マルグテ夫人も、これを読んだ可能性はあるかもなあ。アメリカでだって読めるんでしょ?」 カーライルが頷く。 『今、情勢が揺れてるセレツィアを調べていたら引っかかったんだ。日本人スタッフがみつけた』 カルロも、 「セレツィアの宮殿内でもふたりの妃のお蔭で、かなりの人数で日本語が達者な者はおります」 カルロもだもんね。
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