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【隠れ家】
私達は、良が用意したホテルに移動した。
一番の理由は、マンションでは不特定多数の人が出入りするため、不審者の特定が難しいから。警護するにもより多くの人員がいるのだと言っていた。
しかし連れて行かれたのは、山下公園の臨む超がつくほどの老舗高級ホテルだ。
「ふわぁ……」
自腹で泊まることなどないであろうその部屋に、私はクラクラしてしまう。
「こんなとこ、泊まっていいんですかあ……?」
最上階のスイートルームだ、リビングにミニダイニングまで付いていて、まるでマンションの様だった。
「これくらいなら、変な奴らが近づいて来たら、一発で判るだろ?」
「ああ……なるほど」
遊園地でも浮いていたくらいの人達だ、こんなホテルは似合わないだろう──って、ここに入る時に既に警備をしてくれるらしき人達がいたけど、黒服で十分強面だったんだけど……ってのは、目を瞑ろう。良に最敬礼で挨拶をしていた、なんかちょっと反社会的組織っぽいけど、うん、目を瞑ろう。
私達を、守ろうとしてくれているんだ。
この豪奢な装飾の室内で私はどこにいたらいいんだろう、くらいで立ちすくんでいたけれど、フィルは慣れた様子で窓際のふかふかのソファーに深く腰掛けた。すぐに足を組んで、ひじ掛けに頬杖をつく、そんな姿も様になってる。
やっぱり、この人は王子様、なんだな。
「あの、でも……実際問題、お金って……」
子供が気にしなくてもいい事が気になった。だって、豪華なホテルに、相当な人数が動いてるよ。
「大丈夫だよ、俺達は警察から謝礼を受け取ってるし、ボスからも貰ってるからね」
「ボス……?」
聞きかけてやめた、その『ボス』は黒服に白いマフラーをして葉巻を吸っているイメージだった。立ち入ってはいけない、と理性が自制した。
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