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『本当にやるのか』
『マルグテ夫人にひと泡吹かせましょう』
良が笑顔で言う。
『でも、これで本国にいる家族に何かあったら……』
『殿下、信じましょう』
カルロが英語で語りかけた。
『あのシルヴァン様と渚沙様です、きっと打開する機会を窺っている筈です』
フィルは小さく小さく、頷いた。
*
それでも乗り気でないのか、フィルはカメラを向けられてもにこりともしない。
『殿下、スマイルですよ』
インタビューをしている風にして、向かいのソファーに座っているカーライルが言う。でも、フィルは余計にしかめっ面になる。
「大根だな」
良が笑顔で呟く、小声でもないその言葉の意味を理解したのは私だけだ。
『じゃあさ』
良が外野から声をかける。
『里帆ちゃんと話しをさせてみたら?』
『ええー?』
私の名前が出たのは判った、思わずPCから顔を上げてそちらを見た。
皆──カーライル、カルロ、フィルと目が合う。
「ん?」
『でも、彼女もアメリカにいると言うのは、不自然では』
カルロが言う。
『彼女は映り込まないようにすればいいでしょ』
『ああ、なるほど』
カーライルは手を叩いた。
「Hey Girl! Come here!」
「え?」
「少し殿下と話して、緊張をほぐしてあげて」
良が笑顔で言うので、私はPCを閉じて立ち上がった。
ソファーから立ち上がったカーライルと入れ違いに座ったけど、いざ話せと言われると、何を話せばいいのやら……。
「ええ……と」
口籠る私の前で、フィルは足を組んで肘掛に頬杖をついて私を見ている。
「あの……」
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