67人が本棚に入れています
本棚に追加
綺麗に整った顔の、綺麗に輝く琥珀色の瞳に魅入られて、私の心臓は不自然に高鳴ってしまう。口から心臓が飛び出しそう、ってこういう時に使うんだな。
心臓のドクドクと言う脈動は、私の体の動きにすら伝わる。唇が震えて、指も震え出す。
いや、待って。目の前にいるのは『橋本直輝』君で、夏からとは言えクラスメートで、つい先日なんか抱き付いたのに……いや、抱き付いたは語弊だ、自殺を止めた……あ、なんで自殺なんて思ったんだっけ、ああ、そう、なんだかとても淋しそうな顔をしてたから……。
思わず、瞳を見つめ返していた。
今は、光が灯っている。先日見たような「今にも死にそうな顔」はしていない。それに安堵していた、思わず笑顔になる。
「──なんだよ」
「あ、ごめん、フィルの顔見て笑った訳じゃないの。今は生きようとしてるなって思って、嬉しくなっちゃった」
「元々、死のうとはしてない」
「でも、あの時は本当にそのまま電車に飛び込むのかと思ったんだもん。あ、あのね、人に迷惑かける死に方は駄目だよ? 飛び込みとか飛び降りとか。かと言って樹海に入ってとかもダメ」
「樹海?」
「富士山のすそ野に広がる森があってね。自殺の名所なんだ」
入ると出られないから死ぬって噂だけど。実際にはそんなことは無い、本当に死にたい人は、首つりとか服毒とかで死ぬようだが。
暗い話題なのがカーライルにも判るのか、脇で「スマイル、スマイル」と呟いてる。
「自殺のご遺体を送り出すのは、赤の他人でも辛いよ。その人生を全く知らなくても、死ぬまで追い詰められた人の事を思ったら」
「──死なないって言ってるだろ」
「そう?」
「これでも、将来は国を担うよう教育されてる。俺の命は俺だけのものじゃない事は自覚してる」
「そっかあ、王子だもんねえ」
最初のコメントを投稿しよう!