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リアル王子だあー、そうだ、こんな機会は滅多にない!
「あ、ねえ! 取材させて!」
「は? 取材?」
きょとんとしたフィルの顔を、カメラマンは逃さず撮る、シャッター音が連続した。
私はカウンターに戻ると、鞄からスマホを取り出した、メモ帳にもなるしボイスレコーダーにもなるんだもん、便利な道具だ!
「フィルは、お城に住んでるの?」
私はソファーに座りながら聞いた。
「いや、セレツィアには城はない、俺達は宮殿に住んでる」
「宮殿!」
本当の王族だ!
「部屋って、いくつくらい……!」
「──そんな事知って、どうする?」
「この先、王様とか貴族が出て来る話を書く時の参考に!」
「今、書いてるのじゃなくて?」
「あれは、セレツィアは出てこないもん」
半ば、ノンフィクションなので、舞台は日本だ。
「あ、ねえ、間取り書いて!」
「ええー……全部かよ」
「じゃあフィルの部屋だけでいい!」
私の願いを、カルロが手伝ってくれる。ホテル備え付けの便箋とボールペンを渡してくれたのだ。フィルは文句も言わずに書き始めた。
「3LDかあ、意外、宮殿の中に家族は一緒に住んで……」
「いや、家族それぞれに部屋は別にある」
「お父さんもお母さんも?」
「さすがに両親は一緒だ。でも弟と同じ部屋で過ごしたことは無い」
「あ、フィルは弟いるんだ?」
「ああ、ハインって言う。まだ幼いから、殺されるような事は無いと思うが」
6歳年下だと教えてくれた、きっとその子の事も心配なんだろう。11歳なら、小学生かな?
「……お母さんとは一緒にいるかな?」
「さあ……」
「おられます」
カルロの声が頭上からした。
「フィル様がお帰りならない事で不安なのでしょう、赤ちゃん返りのような状態で夜泣きが酷いので、世話係も手を焼いていたそうです。そこで渚沙様が自分と一緒に過ごさせろとおっしゃったのですが、マルグテ夫人は勿論許可など出すわけがなく、フランスの寄宿学校へ行かせようとしたのですが、渚沙様は固辞し、どうしても行かせるのならば、自分も行かせろと騒ぎ立てて──マルグテ夫人が折れたようですね。現在はご夫妻の部屋で軟禁状態です」
「あ、じゃあ家族は一緒にいるんだね?」
「いえ、シルヴァン様は……西の搭に閉じ込められています」
「西の搭?」
「──宮殿内だが、隔離された場所だ。他の棟へは各階から行けるのに、西の搭だけは一階にしか出入口がなく、最上階にある小部屋まで階段しかなくて、窓も小さく鉄格子がはめられている」
フィルが淋しそうに言う。
「……牢屋?」
「牢ではないんだろうが」
室内は、きちんと王宮仕様になっているらしい。
「──鍵は、外からしか掛けらない」
「それ牢屋って言うんだよ!」
出る事が出来ない部屋が、まともな訳がない!
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