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「殿下に呼びかけて、だって」
良が耳打ちしてくれる。
「あ、はい──フィル―」
言うと、フィルは何の疑いもなく、くるりと頭だけ振り返って私を見つけてくれた。
その瞬間、猛烈なシャッター音が連続した。
あー……なるほど、と判ったのは、私だけではない。
「なんだよ!」
怒る様すら、撮られる。
『もうおしまいだ、こんな茶番!』
フィルがブルーバックの前から離れながら怒鳴る。
『茶番かどうかは、見てからのお楽しみ』
新聞に載ったものを、と言う事だ。
『デイリーNY誌の一面を飾ってやる。今もう原稿は書かせてるが、写真の合成には数日かかる。発行出来たら連絡するから、電子版をチェックしれくれ』
片づけを終えると、デイリーNYの人達は、潮が引く様にいなくなった。
途端に静かになった室内に、良がパンっと手の平を叩く音が響く。
「さて、じゃあ飯にするか!」
その晩は、ルームサービスを取った。
超がつくようなホテルの、豪華な食事が並ぶ。フィルは慣れているのだろうか、当たり前のように食べ始めるけど。
「あの……ど素人でごめんなさい、こんな立派なご飯、お金は……」
「大丈夫、大丈夫! ボス持ち!」
カウンターの椅子に座った良が言う。
え、これも?
「でも、こんな豪勢なご飯……」
「腹が減っては戦はできぬってね」
でも、ここまで豪華じゃなくても。
そんな私の気持ちを悟ったのか。
「ああ、じゃあ、次は、もっと家庭的に」
良が言ってくれる。
「はい、そうしてもらえると……それに、一緒に食べませんか?」
大人と待たせておいて、私とフィルだけが食べている、って、私はまだ手を付けてないんだけど。フォークとナイフが用意されているのは、私とフィルだけなのだ。つまり、まずは子供が食べろって事だよね。
「警護の関係でね。一緒に食事って訳にはいかないんだ」
他の人たちは別室で食べているのだと言う、それも交代で2、3人ずつで摂っていて、自分の後で行くからと良は言う。
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