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【中華街の攻防】
翌朝、ホテルのミニキッチンで、良はエプロン姿でフライパンと菜箸を操っていた。
「あ、里帆ちゃん、おっはよー」
高級ホテルのスイートルームで、イケメンの爽やかな笑顔に迎えられる朝、本当に私の身の上に何が起きたのだろう?
ちなみに、昨日フィルの写真を撮った部屋は、男性陣が寝泊まりすることになった。私は同じフロアの別の部屋に、ナナさんと泊まっている。こちらよりリビングがやや小ぶりで、見晴らしも公園が臨めるわけではないけど、十分豪華な部屋だ。
「あ、おはようございます」
慌てて会釈していた、それを見て、良は笑う。
「そんな畏まらなくても。一緒にいる間は家族だ」
「そんな」
こんなイケメンの家族は要らないです。相原さんもだけど、そのキッチンを臨むカウンターに座るフィルも、その後ろに立つカルロも、顔面偏差値高すぎなんだよ!
視界が眩しいのは、差し込む朝陽のせいだけではない!
「はい、どうぞ、ここ、座って」
言いながらフィルの前の皿にスクランブルエッグを乗せる。
その隣の椅子のところにも皿が用意されていた、私はそれを前に座った。
「里帆ちゃんは、卵は何がお好み?」
「え、あ、私もスクランブルエッグで……」
その時、トースターが軽快な音を立てた、良がトングでそれを取って、フィルの皿に乗せる。
「え、トースターなんてありました?」
って言うか、フライパンも!
「俺の持ち込みーっ! 里帆ちゃんじゃないけどさ、ずっと外食ってのも嫌じゃん。俺、料理は食べるより作る方が好きだし」
持ち込み!? そんな事していいの!?
「料理が好きだなんて、良の奥さんになる人はいいですね」
料理だけでも分担してくれたら、家事は楽だもんね。
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