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「いえ……申し訳ありません、ちょっと……相原さん、ご配慮をお願いします」
配慮? なんの?
「がってん承知」
良が笑顔で言いながらフィルの前の皿にスクランブルエッグを乗せる、その笑顔をフィルはしかめっ面で見上げていた。
*
無事一日が終わり、下校するとき校門で良が待っていた。もっとも一人じゃない、数人の女子が取り囲んでいる。
朝は学校の近くまで一緒で、学校があるブロックまで来ると良は通用口から入るって言って、別れたのだが。
近付く私を見つけて、良が手を振ってくれる。
「一緒に帰ろう」
途端にどよめいた。
「ええええ!? 先生、どういう関係!?」
「だから、先生じゃないって」
「女生徒を堂々お持ち帰りって!」
「違うんだよ、彼女のご両親に面倒を頼むって言われてて」
「親公認!?」
「まあ、そんなとこ」
「──相原さん」
私はわざとそう呼んで、少し離れたところから声をかけた。
「誤解を招く言い方は差し控えてください」
「おお、さすが小説家、難しい言葉遣うね」
「言わないでください!」
小説書いてるなんて、内緒なんだから!
「いいから帰ろうよ、みんな待ってるよ」
「みんな!?」
女子たちの悲鳴が響く。
「そう、男ばかりのハーレム」
──うん、それは確かに間違いない、けど……! 言い方ってものが!
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