67人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
とりあえず、いつも乗り込むホームの中程までは行こうと歩みを進める。
カルロが気付いてくれた。
「満島様」
きゃ、年上外国イケメンに名前呼ばれた!
「こんにちは」
私は小さく会釈しながら近付く、視線を上げて私を見た橋本君も微かに頭を下げた。
「おばあちゃんちに?」
私は橋本君に聞いたけど、
「はい、実は渚沙様を心配されて、体調を崩されているのです。せめて孫の顔くらいみたいとおっしゃるので、週に一回程度、ご挨拶に」
カルロが答えた。
「うーん、じゃあ、一緒に住めばいいじゃん、とか思ってしまうけど」
できないから通ってる、と判っていながら聞いていた。カルロは笑顔で応えてくれる。
「訪日当初はおばあさまのお宅にお世話になっておりました。しかし国籍剥奪の報が入ると同時に、御命が狙われてるとも連絡が入り、そんな馬鹿なと思ったのですが本国より私の部下も数名やってくる事態となりましたので、大人数ではご迷惑がかかると思い、離れる事に致しました」
「部下? カルロさんのお仕事は?」
「近衛の指導をしております。かつては隊長を拝命しておりました、隊長を引退してからも後進の指導をさせていただいております」
近衛兵かあ、それであの身のこなし! 一緒にいる男性も、近衛兵なんだな! 会話に入ろうとはせず、鋭い視線で周りに気を配っている。
「……ふわあ……本当に、物語の世界にいるみたいだ……!」
心の声が漏れた、それを橋本君に視線で牽制されてしまった。
そうだよね、橋本君にとっては、辛い現実だ。
「ごめん」
小さな声で謝っていた、橋本君から返事はない。
最初のコメントを投稿しよう!