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「あなたの無責任な一言は、民衆の信頼を失います。民衆は王が誰でもいいわけではありません。いずれはあなたが王位を継ぐと思っているから、ひとつになり国を守っているのです。なのに今のセレツィアは民が離れつつあります、ハルルート様では駄目なのです。どうか国に戻る事を一心にお考え下さい」
「──お前達がそんな風に言うから、俺の命が危険にさらされてるのに──」
それは、橋本君の本音、だろうか。
10代後半の、思春期真っただ中の私達に、国だ民だと言われても、私にはピンとこない、私がやりたい事をやりたいと思うのは、普通かも知れない。それは子供の頃から王位を約束されていたとしても──?
「──橋本君は、セレツィアに戻りたいっとは思ってるんだよね?」
「勿論だ、あそこには親も弟もいる。早く元の日常に戻りたい」
「──ん、よかった」
私の呟きに、皆の視線が集まった。え、そんな変な事は言ってないと思うけど……私はカルロを見上げて微笑んだ。
「橋本君は他人から「死ね」って言われる現状が嫌なんだよね。王様になったらなったで、また大変なんだろうけど、とりあえずハルルート王の奥様が亡くなる前の日常に戻りたいって気持ちなら、うん、理解できるよ」
きっと、面と向かって「死ね」なんて言わたりはしていないだろう。あんな敵意むき出しで、大の大人に言われたら──そりゃ傷つく。
「──満島様」
カルロが微笑んでくれた。
「申し訳ありません、私も殿下の幼少期より教育係も務めていた手前、つい厳しくなりがちです。全くその通りです、私達もできるものなら今すぐ帰りたいです」
そんな風に本音を吐露してくれて、私も嬉しくなる。
「うん、本当だよね、早く戻れるといいね」
早く──どうしたらいいんだろう?
投票権も持たない一介の小娘に、何が──。
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