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【遊園地ランデブー】
桜木町駅の改札前で待っていると、橋本君がカルロとやってきた。
「あ、カルロさん、ごめんなさい、勝手に誘って」
私は慌てて頭を下げて謝った。カルロがついてきた理由は判るから。
「いいえ、むしろ殿下にはいい気分転換となるでしょう」
カルロは笑顔で応えるけど、橋本君は見上げて睨み付ける。
「よく言うぜ、行くって言ったら烈火のごとく怒って、自分の立場が判ってるのかとか散々怒鳴ってたくせに」
橋本君の文句を、カルロは爽やかな笑顔で切り返す。
「警護するこちらの身にもなってください──あなたひとりの御身を守るだけならまだしも、不特定多数の命の保証は致しかねます」
──あの……後半はフランス語になってますよぉ、これは私に聞かれたくない内容なんだなと理解した。
「あの……本当にごめんなさい……あの、遊園地なんかだったら、安全ってことには……」
私の疑問に、カルロはにこっと微笑む。
「先方の本気度が測りかねるので判りませんが──自爆してまで殿下を狙うまではしないとは思います」
それはまた、究極だよね。
「しかし私どもが傍に居ては余計に目立ちます」
確かにカルロはバリ目立つよねー! 身長高いし、色黒だし、中東系イケメンだし! 他の人たちも、外国人なのは明らかだ。
橋本君も、お母さんが日本人なだけあって東洋系だけど、やはり異国の血は誤魔化せない、すっと通った高い鼻筋は、ヨーロッパを感じさせる。
「私の他数名がお姿が見える範囲にはおりますので、何かあればお知らせください」
既に駅舎の外に、何人か見覚えのある人がいるんだよね。ああ、私が思い付きで誘ったりしたから……。
「はい。あの……本当にごめんなさい、なんか考えなしで」
「考えなし、ではないのでしょう」
カルロは笑顔で言ってくれる。
「殿下を思っての事と判ります、殿下も珍しく食い下がりましたし」
え、そうなんだ? 思わず橋本君を見上げると、なんだか恥ずかし気にあらぬところを見ていた。
「では、どうぞごゆっくりお楽しみください」
そう言ってカルロは頭を90度下げてから、その場から居なくなった。
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