13人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
22XX年の6月X日の月曜日……
東京郊外に在るビルの宿直室に彼女――ミニカはいた。
今年、30歳になる少し変った女性だ。
「本当に不思議なくらい静かね……」
ふと彼女は、テーブルにある土曜日の新聞を見て呆然となった。
『金曜日の午後に、世界各地に飛来した隕石から発生した、謎の殺人ウィルスにより、全人類は滅亡の危機にある。
この殺人ウィルスは、人の唾液によって感染し、感染した人は数時間で全身がボロボロになって他界するという、極めて恐ろしいウィルスだ。
全世界に拡大を続けており、地球全体を呑み込むのは、時間の問題と言えるだろう。』
ミニカは、気が遠くなる思いだった。
新聞上部の『関東新聞』の下に、
『次回の発行は未定です』
それを見たミニカは、
「えー……?」
新聞をテーブルに戻すと、テレビをつけようとしたが、どのチャンネルにしても映らず砂嵐だけの画面だった。
彼女はソファーに崩れるように座った。
「そうか……この土日にかけて、ほとんどの人類がその殺人ウィルスに殺られたようね……。
それで、こんなに静かなんだ……。私は、ついさっきまで……」
彼女は、ついさっきまで、地下室にある金庫室に閉じ込められていた。
つまり、そこはK銀行ビルの一室だった。
ミニカは巧妙な方法で金庫に入り、大金を盗もうとしたのだ。
が……
金庫の扉に仕掛けておいたストッパーが、何かの振動で外れたために、彼女はオートロックの金庫内に閉じ込められてしまったのだった。
銀行の業務後の全ての作業は、2050年頃からロボットに任せるようになった。
それを利用したミニカが、ロボットの目を盗んで金庫内に入ったのは金曜の業務終了直前だった。
したがって金庫の扉が開く月曜の朝まで、金庫内に残された空気を効率よく吸うことで、彼女はなんとか生き伸びたのだ。
呆然と外に出たミニカは、人影が皆無となった街を泣きながら歩き、住まいのマンションに戻って行った。
「まさか、こんな人生になるとは……」
と、つぶやきながら食事を作り、食べた。
そして気分転換に――と、好きな音楽を聴きなが、眠りについた。
最初のコメントを投稿しよう!