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大雨の翌日の夕暮れだった。
いつも通りの農作業の途中、
水路脇に壊れたビニール傘が。
片手で抜くと、
アリスが硬く横たわっていた。
隠す暇はない、
母はすぐに気付いて私を押しのけ
アリスを自分のエプロンに繰るんだ。
「ああ・・・あああァァ!」
号泣が響いた・・・。
いつの間にか帰っていた尚史は
学校帰りのカバンを畦に置き
母の背中に駆け寄った。
いつかこんな日の来ることが
私は何より恐かった。
糸が切れるように死んでしまった妹、
彼女の遺した傷口が
アリスにこじ開けられそうで
私は何より恐かった・・・。
- 了 -
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