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ファイヤーおばあちゃん
この世の総てを燃やすには、いったい何千度の炎が必要なのだろう。
生き辛さを覚えていたボクはふと思った。
人間が燃えるところは見たことがある。
死んだおばあちゃんを燃やす火葬場。
棺に死体を入れ、灼熱の高炉からゆらゆらと傷んだ缶詰に似たニオイが立ち込める最中、不祥事で高炉の蓋が開いたのだ。
火炎粉に包まれ宙に舞う髪の毛。
骨粗鬆症の診断が下されていたわりには原型を留めた骨格。
墨だらけ焦げ跡だらけになりながらも燃え残った棺の釘。
肉を燃やすことは簡単だ。恐らく髪の毛も。だが骨と釘はそうはいかない。
おおよそ個人で用意できない火葬場の火力をもってしても燃え余る有形而下の残りカス。
だと言うのに世界の総てを燃やそうだなんて……果たして可能なのだろうか?
ところでおばあちゃんはよく、”嘘をついたら地獄に落ちちゃうよ”と脅してきた。
果たしてあの業火で地獄に灼け堕ちたのか、天国に焚き上がったのか。
……そして、ボクはどっちに逝くのだろうか。
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