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「あんな歌を歌わせるなんて、保育園はオカシイですよ!」  どうやら、はるが保育園で覚えてきた歌について物申しているようだった。 「今は、親のいない子供の気持ちに配慮して、小学校の運動会じゃ親子別々で飯を食うし、母の日父の日だからって、似顔絵なんか描かせないって言うじゃないですか!」 「で? はるは、なにを歌っていたんだい?」 「あめあめふれふれ――ですよ!」  ああ。お母さんが傘を持ってお迎えに来るっていうアレか。 「豪は、そのなにが気に入らない?」  敢えて訊いてみることにした。 「決まってるじゃないですか! はるには、お母さんがいないんですよ? そんなはるに、残酷じゃないですか!」  真っ赤な目をして「はるが可哀想だよ!」と言い募る。それに対して、「僕はそうは思わないけどな」と静かに返すに止めた。 「先生は、薄情だ!」    直後、職場からの呼び出しがかかった。急患だ。もう少しフォローしたかったが、致し方ないので直ぐに支度して出かけることにした。  思い起こせば、豪が自分に対して赤裸々な感情をぶつけてきたのは、これが初めてのことかもしれない――元上司のせいか常に一線引いて接してくる豪の、ささやかな変化が愛おしく感じた瞬間だった。
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