エッセイの趣旨

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エッセイの趣旨

 実はスランプに陥っていました。  たぶん、きっかけは、拙作『おいしいカクテルのつくりかた』が、新作セレクションに選ばれたことでした。  あっ、それ自体は、もちろんとっても嬉しかったんですよ!自分の書いた作品を、エブリスタの編集部さんに認めていただいたことも、読者さまが増えたことも、それによって新たな出会いが生まれたことも。すべて、私の宝物です。  ですが、光が強くなれば、闇が濃くなるように、この嬉しすぎる賞にも、副作用がありました。  少しだけ、すこーしだけ気負ってしまったんですよね(^^;;    なんとなく、以前のようには、自分の作品に自信が持てない状況が続きました。  執筆に手を抜いたつもりは一切ありません。いつも120パーセント以上の要求を自分につきつけながら、書いてきたつもりです。  が、その一方で、これでいいのかな、ちゃんと書けてるのかな、おもしろいのかな、みたいな、自信のない思いが、ずっと心を曇らせていました。  それに輪をかけるように、自信を失わせるような出来事が加算されて、もやもやした気持ちが晴れないまま、それでも書きたい気持ちは抑えられず、衝動のままに書き続けていました。  そんな時に、ある言葉に出会ったんです。  スランプとはなんなのか、という問いに対しての、とあるブロガーさんの回答です。 「なんとなく感覚でできていたことを、理詰めで捉えて再現可能にしようとする過程で発生する、停滞の状態」 (https://blog.tinect.jp/?p=33277 より)  目から鱗がボロボロと落ちました!  は〜、なるほどな〜!、って。  おそらく、創作に関わる作家さまなら、誰でも経験したことのある、スランプ。  いや、創作に関わらず、スポーツでも勉強でも仕事でも、なにかに一生懸命に打ち込んでいれば、陥る可能性のある、スランプ。  スランプに陥るというのは、マイナスなことばかりではありません。  自分にある程度の実力がついた、という証。初心者脱却のチャンスでもあります。  ならば、せっかくのスランプを、生かすことを考えよう。  今までしてきたことの良さ、改善点を、理詰めで捉え直すことができ、いつでも再現可能にすることができれば、自分の財産になるんじゃないか、と思いました。  さあ、スランプの自分を誇りに思い、自信を持って乗り越えよう!  …というのが、このエッセイの趣旨です。
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