美しさに気づく力

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美しさに気づく力

 テレビ番組『プレバト!』を、毎週かかさず観ています。  芸能人が作った、俳句や絵画、生け花などの作品。それを、専門家が査定し、才能アリ・凡人・才能ナシに分け、順位付けする番組です。  特に好きなのは、「俳句の才能査定ランキング」。批評・添削を行う、夏井いつき先生の、厳しくも的確な指摘が大好きなんです。    たくさんの傑作俳句の中から、私が一番感動した俳句を紹介します。   2019年7月25日放送、夏のタイトル戦『炎帝戦』。みごと優勝した、フルーツポンチ村上さんの作品です。 「行間(ぎょうかん)に ()(ページ)の影 夕立晴(ゆだちばれ)」  開いた文庫本の、文字と文字の間に映る、次のページの影。影に気づいたことで、まわりの明るさにも気づく。ふと顔をあげると、いつのまにか雨がやんでいた。そんな句です。  『次ページの影』に気づいた時、村上さんは、「ああ、綺麗だな」と感じたそうです。この気づきこそが、句の最大の魅力だと思いました。    さらに、この俳句の解説で、村上さんはこう語りました。 「小さなことを発見するってのは、それ以外の、大きな世界を広げてくれるんだなっていう、典型的な一句かな、と…」   この村上さんの台詞を聞いて、思わず涙ぐんでしまいました。なんてすばらしい感性を持っている人なんだろう、と思って。  慌ただしい日々のなかで、見落としている小さなこと。村上さんは、小さな美しさを見逃さずに拾い上げ、作品にまで昇華できる”感性”をお持ちなんですね。    つい、遠くの煌びやかなものばかりを追ってしまいがちだけど、綺麗なものは、きっと身近にたくさんあります。ただ、自分が気づいていないだけで。  そんなことに気づかせてくれた、素晴らしい一句です。 (ちなみに、俳句・短歌の引用は、「批評・鑑賞の意が明確な場合」は許容されるそうです)  どうすれば、この忙しい日々の中で、小さな美しさを見つける感性を養うことができるんだろう。その問いに、私なりの答えを考えました。 (続く)
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