第6話

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第6話

 嫌がったらやめようと、最初から決めていた。  ちふゆが「嫌」と言ったら、やめようと。  でも、いざ唇を合わせてみたら、ちふゆは……キスのときに鼻息が当たることを恥ずかしがるような、驚異の初心(うぶ)さで。  舌を絡めるようなキスも、知らずに。  怯えたように逃げ惑う舌を追ってしゃぶっている内に、青藍の方が夢中になってしまった。    ちふゆの小さな口を、強引に蹂躙すると、青藍の腕の間でちふゆの肩が時折ひくんと跳ねた。  肩だけではない。腰も動いている。  たぶん、無意識で無自覚な動作なのだろうけど、青藍の太ももに下腹部をこすりつけてくるちふゆの仕草は、エロティックだった。  青藍はキスだけでやめとこうと思っていたのに、口づけをほどいた後のちふゆが、とろとろに蕩けた目をして、白い肌をあんまり真っ赤に色づかせているものだから。  もう少し先まで、してみたくなる。  青藍はちふゆのジャージの上から、彼の膨らんだ性器をさすった。  ひくん、と。また細い肩が揺れる。 「ちー。もっと、気持ちよくなりたい?」    青藍の問いかけに、ちふゆの困り眉がグッと寄せられて。  潤んだ瞳が、瞬いた。その拍子に、涙がひと粒零れ落ちる。  キスしかしてないのに。  上気した頬や濡れた目は、まるで事後のようにも見えて、青藍の劣情を煽ってきた。 「ちふゆ。どうする?」  重ねて問うと、ちふゆが眦にちからを込めるのがわかった。  眉は、相変わらず困った形のままなのに。  目にはほんの少しの怯えを覗かせているくせに。  「お、オレの、こと、き、気持ちよく、しろよ」、だなんて、セリフだけは勝気で。    青藍は思わず笑ってしまった。  笑いながらキスをして、マットレスとちふゆの背の間に手を割り込ませる。  唇を合わせたままで、よいしょ、とちふゆを抱き起すと、ちふゆが驚いたようにもごっと声をあげた。  ベッドの足元側には、漫画が数冊散らばっている。  さっきまでこれを読んでいたのに……と言いたげな目で、ちふゆがその表紙を視界に入れていた。    青藍は着物が開けるのも構わず、胡坐をかくと、その足の間にちふゆを座らせた。 「え、な、なに……」 「いいからいいから。はい、ちー。俺にもたれていいよ」  ちふゆの痩せた体をバックハグするように腕の中に閉じ込めて、青藍はそう言った。  ちふゆがおずおずとこちらを振り向いてくる。  その、ひよこのような柔らかい金髪を、さわさわと撫でてやると、警戒心を解いたのか、ちふゆが控えめに青藍の胸にもたれかかってきた。  青藍はちふゆの前に回した手で、彼の骨格を辿った。  てのひらを脇腹や胸に滑らせると、時折ちふゆがビクっと跳ねる。 「ちー」 「……ん」 「バンザイして」 「え?」  ちふゆが顔を巡らせて、青藍を見上げてきた。  それに頷いて見せて、青藍は弟妹たちに言うように軽い口調で繰り返した。 「はい、バンザーイ」  つられたようにちふゆの両腕が肩の辺りまで上がる。  青藍はその隙に彼のTシャツの裾を掴み、ずぼっと一気にそれを脱がせた。 「うわっ」  ちふゆは狼狽えた声を上げたけれど、弟たちの着替えをよく手伝っている青藍にかかれば、シャツの一枚ぐらい瞬く間に脱がせることができる。  ちふゆの白くひょろりとした上半身が露わになった。    ちふゆの肌は赤ちゃんみたいだ。  きめ細かで、無垢。  彼はそのベビースキンを、羞恥に薄赤く染めている。  ちふゆが両手を胸の前で交差させて、折り曲げた膝を抱え、青藍の目からそこを隠そうとする。  可愛い仕草に笑いながら、青藍はまたちふゆの体を撫で始めた。 「ひゃっ」  ちふゆが首を竦めた。  耳たぶが桃のような色になっている。美味しそうに見えて、青藍はそこをぱくりと咥えた。 「ちょ、やっ、やめっ」  ちゅば、と耳朶を吸った唇を少し上げて、耳殻を舐めた。  ぴちゃぴちゃとわざと濡れた音を立ててやると、ビクっ、ビクっ、とちふゆの体が反応する。 「あっ、やっ、やだっ、そ、そんなとこ、舐めんなっ」 「ちー、耳、感じるの?」 「ち、ちがっ……あ、ああっ」  耳の孔に舌先を捻じ込んだ途端、ちふゆが紛れもない嬌声を上げた。  青藍は彼の耳を攻めながら、裸の上半身へとてのひらを這わせ続ける。   「ちょっ、お、おいっ、くすぐったい……」  脇腹にするすると指を滑らせていると、ちふゆが体を捩って抵抗してきた。  くすぐったい、ということは敏感な場所、ということだ。  青藍は構わずに彼の腋の窪みまでを辿った。    そこを指で探りながら、青藍はあることに気付く。  ちふゆの腋下(えきか)が、つるつるだったのだ。  処理しているのだろうか?  そういうことをするようなタイプには見えないけれど……。  そんなことを思いながら、青藍はちふゆの浮き出た鎖骨を撫でて……ちふゆが隠してる胸へと手を伸ばした。 「あ、ちょ、そ、そこっ」 「ちーのおっぱい。触らせて?」 「だ、だから、変な言い方……あぅっ」     指先で慎ましいような大きさの粒を探し当て、そこをつつく。  ちふゆが狼狽えたように首を振った。    摘まんでくりくりと弄ると、ちふゆが抗議の声を上げる。 「そ、そんなとこ、触るなっ」 「気持ちよくない?」 「ないっ。お、女じゃないしっ、そんなとこでっ」 「でもさ、男でもココ、開発するとすごく感じるみたいだよ?」 「お、おいっ」    青藍はちふゆの乳首を引っ張り、ふにふにと粒を押しつぶした。  しばらく強弱をつけて愛撫していると、その内にちふゆが膝をもじもじとすり合わせ始める。       「ちょ、も、もう、いいって」    ちふゆが青藍の腕の中で体を捩った。  胸は相変わらずクロスした腕でガードされていて、その隙間に指を捻じ込んでいるわけだが、このままでは触りにくい。 「ちー」 「な、なんだよっ」 「腕、一回退けてくんない?」 「い、や、だっ」 「なんで? そんな変な乳首してんの?」 「バカっ。お、オレの乳首はふつーだっ」 「じゃあなんで見せられないの?」 「お、おまえがっ、変な触り方するからだろっ」  ちふゆが真っ赤になって怒鳴る。  照れ屋なところも可愛いけど、このままじゃ次のステップに進めない。  青藍は大袈裟にため息をついて見せた。 「そうか~。ちーの乳首は変な形してるんだな~。あ、わかった。乳首真っ黒なんだ? めっちゃ使い込んで、真っ黒な乳首してるんでしょ?」 「違うって言ってんだろっ!」 「じゃあ証拠見せて」 「う……」    ちふゆが恨みがましく青藍を見上げてきた。 「見せられないなら、ちふゆの乳首は真っ黒ってことで」 「う~っ、クソっ、見ろよっ。ちゃんと見ろっ。黒くねぇよバカっ」    ちふゆが突然膝で立ち上がったかと思うと、くるりと体の向きを変えた。  そして、青藍と向かい合う形になると、両腕をばっと広げてこちらへ白い胸を突き出してくる。  ……チョロい。チョロすぎる。  5歳の弟よりもチョロい。  こみあげる笑いに震えそうになる唇にちからを入れて、青藍は軽く反らされたちふゆの胸部を見た。  ピンクだ。  ものすごく清楚なピンク色の乳首が、なにかの木の実のようにぷくりと尖っている。 「うっわ~」  青藍は思わず感嘆の声を漏らしてしまった。  女性でも、こんなにきれいな色の乳首を見たことがない。    ちふゆの体は、本当に誰の手も知らないんだな、と青藍は改めて感じた。    それからふと思い立って、 「ちー、そのままバンザイしてみて」  と言ってみた。  ちふゆが怪訝に眉を顰め、なんでだよ、と問い返してくる。 「いいから。はい、バンザーイ」  先ほどと同じように掛け声を上げると、チョロくて素直なちふゆが条件反射のように両手を挙げた。 「ちー、もうちょっと上まで。はい、バンザーイ」 「な、なんだよ……」  困った顔をしながらも、ちふゆの両腕は真っ直ぐ上へと伸ばされた。  青藍は、露わになった両腋を見て……やっぱり、と思う。  やはり、ちふゆの腋には毛が生えていない。  つるつるだ。  処理をしたのかも、とさっきは思ったけれど、これは恐らく……天然だ。  だってその証拠に、腕にだってムダ毛が見当たらない。  ちふゆの体毛は、たぶん、すごく薄いのだ。  そう言えば髭も、生えた形跡がなかった。  まったく、どこまでも赤ちゃんのように無垢である……。 「ちー」 「ん?」 「そのまま、五秒数えて」 「なんでだよ?」 「いいから、ほら、いーち」 「う……。にーい、さーん……」  本当に数を数えだした素直なちふゆに笑いを噛み殺しながら、青藍はちふゆのジャージに指を掛けた。 「しーい、う、うわぁっ!」  ちふゆの悲鳴が上がる。  青藍が膝立ちになっているちふゆのズボンを、下着ごと一気に引きずり下ろしたからだ。   ちふゆが慌てて手を降ろすよりも、ちふゆと同じように素早くベッドで膝立ちになった青藍が、ちふゆの両手首をまとめて頭の上で掴む方が早かった。  華奢なちふゆぐらいなら、右手一本で動きを封じることができる。  ちふゆが手で体を隠してしまわないように、そのままで手首を固定して。  青藍は膝までズボンを下げられた彼の体を見下ろした。  ちふゆの白い肌が羞恥にじわじわと赤く染まってゆく。  ちふゆの下腹部には。  青藍のものと比べるとささやかなほどの性器が、ぶら下がっていて。  それは、ほんの少し勃起しかけていた。  そして、二十歳であれば当然もう生えているはずの陰毛は、一本もなくて。    青藍はちふゆの、無毛のそこを凝視してしまった。 「ちー、こっちも生えてないんだ……」 「なっ……えっ、ど、どこ見てっ」 「腋が生えてなかったから、まさかと思ったけど……すごい、つるつる……」    青藍が左手でちふゆのそこに触れた。  腰骨から鼠経(そけい)に繋がるラインを撫で、陰毛のない下腹部をすりすりと撫でる。 「ちょ、やっ、さ、触るなっ」  ちふゆが拘束された手を振り解こうとしてきたが、青藍のちからの方が強いため、大した抵抗にはならなかった。    青藍はちふゆの小さなペニスをやんわりと握り込んだ。  半分芯をもちかけているそれを、よしよしとあやすように手の中で刺激する。 「ちー。まさか精通もまだとか言わないよね?」  青藍の問いかけに、ちふゆが真っ赤になって怒鳴った。 「バ、バカかっ。そんなわけないだろっ!」 「ほんとかな~? ちーって、ほんとにどこもかしも赤ちゃんみたいだから怪しいな~」 「赤ちゃんってなんだよっ! く、くそっ。放せっ」 「確かめていい?」 「……は?」  ちふゆの目が真ん丸に見開かれた。  くち……と青藍が親指の腹で先端を弄ると、色付いたちふゆの体がひくんと動く。 「ちーのココ、ちゃんと射精するか、確かめていい?」  青藍はそう尋ねながら、ちふゆの目を覗き込んだ。  ちふゆがなにかを(多分文句だ)言おうと、口を開く前に。  青藍は彼の唇をキスで塞ぐ。  ぴちゃぴちゃと舌を絡めている内に、ちふゆの手からどんどんとちからが抜けてゆくのを感じた。    青藍は彼の手首を解放し、そのまま細い肢体をベッドに押し倒す。    マットレスの端の方にあった漫画が一冊、震動でばさりと床に落下した。   青藍はちふゆと唇を合わせたまま、性器を握った左手を、ゆっくりと動かし始めた……。
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