第7話

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第7話

 ちふゆが鳴いている。  少し鼻にかかった、甘い声で鳴いている。  本当にネコみたいなだな、と思いつつ、青藍は口に含んだ乳首をじゅるっと吸った。 「んあああっ」  さっきは気持ちよくないなんて言ったくせに、少し(いじ)っただけでその粒は硬くしこって、青藍の舌を押し返してくる。  いまはささやかで小さな尖りだけれど、こうして愛撫を繰り返してゆくうちに肥大したり、色味が濃くなったりするのだろうか?  青藍はべつに、このままの乳首で充分可愛いと思うのだけれど。  自分が開発するのだと考えると、熟れた乳首になってゆくのも悪くない。  そんなことを思いながら、舌で胸の飾りを押しつぶし、レロレロと舐め上げる。  ちふゆが喘ぎながら腰を跳ねさせた。  そうすることで、青藍が握っているちふゆの牡がぬこぬこといやらしく動き、小さいながらも完全に勃起する。 「ほんとに……こんなトコまでピンクとかさ……」  有り得ない、と喉奥で呟いて。  青藍は香油を垂らした手でちふゆのそれを扱いた。 「ああ~っ、あっ、あぅっ」  ちふゆの背が浮き上がり、青藍の体の下から逃れようと、のたうった。 「ちー、気持ちイイ?」  乳首から顔を離して問いかけると、ちふゆが否定の形に首を振る。 「いやっ、も、もうっ、どけっ、どいてっ」 「なんで? ココとか、気持ちよくない?」  裏筋から亀頭にかけてを指の腹でこすったら、ちふゆの全身が色づき、青藍の着物の肩の辺りをぎゅうっと強いちからでちふゆが握ってきた。     「こ、こわいっ! こわい、からっ」  イイ、ではなくて、怖い、なんて初めて言われた。  青藍は笑いながら、手の中のピンクの性器を愛撫した。  香油で淫靡なテカりを見せる先端から、先走りの汁が溢れて青藍の指を濡らす。  ちふゆの下腹部は無毛で、ペニスも小さ……いや、控えめなサイズだから、初々しいちふゆの反応と相まって、青藍はなんだかイケナイことをしているような気分になった。  けれどそんな思いは、ちふゆの顔を見た瞬間に消え失せる。  短い眉を寄せながら、苦しげに喘いでいるちふゆの表情が、とろとろで色っぽくて。青藍の劣情を駆り立ててくるからだ。 「ちー。出そう? 出す?」 「ああっ! やっ、は、はなせっ、ばかっ」 「このまま射精していいよ」 「や、やだってば! ああっ、あっ、あっ」    ちふゆの腰がかくかくと動く。  そそり勃ったそれもパンパンで、絶頂はもう目前だろう。 「ちー。イくって言ってみて?」 「ぅあっ、え、な、なにっ?」 「出すとき、イくって言って。俺に教えて」 「い、いや、だ! ひぁっ、つ、つよいっ、や、やだっ」  ほんの少し手淫のスピードを上げると、ちふゆが内腿を震わせた。  鈴口がパクパクと開いている。   「ちー。言って」 「やだぁっ、あっ、あっ、あっ」 「ちふゆ」  青藍が彼の名を呼ぶと、ちふゆがむずがるような声とともに、涙を流して全身をくねらせた。 「ああーっ、あっ、イ、イくぅっ、あっ、イくっ、イくっ、ひ、ひああああっ」    ぴゅっ、ぴゅっ、とちふゆのそこから白濁が飛んだ。  尿道の中に残っている精液も搾り取るように、青藍はリズミカルに手を動かした。   「あーっ、あっ、あっ、と、とまってっ、やだっ、で、出てるからっ、とまれ、ってぇ」  達したばかりの先端を弄り、くにくにと精路を押しつぶすようにしてると、ちふゆが啜り泣きを漏らし始める。  青藍から逃げようとしているが、足がシーツを滑るだけで碌な抵抗もできないようだった。  青藍は右手にたっぷりと潤滑油を掬い取ると、会陰部に指を這わせ、その下にある窄まりに塗りつけた。 「う、うそっ」    ちふゆの目が真ん丸に見開かれ、一瞬、動きを止める。  その隙に青藍は、指をつぷりと埋め込んだ。 「や、やめっ……え、う、うそっ、う、うごかすなっ」    体を反転させて逃れようとするちふゆの急所は、けれど青藍の手の中にあって。  くちゅくちゅとそこを弄ってやれば、彼はまたへなへなと腰砕けになる。    青藍は、まだ誰の侵入もゆるしたことがないであろうちふゆの中を、指の腹で探った。  お腹側にある、比較的浅い部分を、『く』の字に折り曲げた中指でゆっくりと刺激する。  ある一か所をこすったとき、ちふゆがハッとしたように肩を揺らした。   「おっ。見つけた。ちーのイイところ」 「な……な、なに、ああっ、あっ、お、オレに、な、なにしたんだよっ」 「聞いたことない? 前立腺。ここをほら、こうしてやれば」  二本に増やした指で、ぬちゅりぬちゅりと抜き差しをすると、ちふゆが「ひぃっ」と甲高い声を漏らした。  一度果てた陰茎が、青藍の手の中でむくむくと育ってゆく。  フェラチオをしようかな、とチラと思った青藍だったが、ちふゆには刺激が強すぎるだろうし、なによりちふゆの顔が見えにくくなるから、次の機会にとっておくことにする。  その代わりに、前と後ろを同時に指で責め立てた。 「ああーっ、そ、それ、やだっ、やだぁっ」  嫌だ、と言いつつもちふゆの声は甘い。  蕩けた顔も可愛くて、青藍は手を動かしながら、ちふゆへと唇を寄せた。  喘ぎ続ける唇を塞ぎ、舌を吸う。  ちふゆはもう、鼻息が当たるなんてことを恥ずかしがる余裕もなく、唾液を口の端から零しながら、青藍のキスを受け入れた。 「んんっ、ん、んむっ、ぁ、ああんっ」    ちふゆの鳴き声を聞きながら、青藍は自身の欲望を探り、着物の裾をばさりと広げて、それを取り出した。  ちふゆの恥態に()てられた青藍のそこは、すでに臨戦態勢だ。    男に抱かれることはおろか、色事すら初めてであろうちふゆに、まさか突っ込むわけにもいかないので、青藍は自身の牡をちふゆのそれとまとめて握り込んだ。  ビクビクと動いているちふゆの竿が、ぬるりとこすれる。 「ひぁっ、あっ、あぅっ、お、オレ、の、つぶれるぅ」 「ははっ。つぶれないつぶれない。ちー、ほら、気持ちいいだろ?」 「んあっ、あっ、あっ、い、いいっ、気持ちいいっ」  青藍は二本まとめて握った手を動かしながら、ぐりゅ、ぐりゅ、とお互いの裏筋がこすれあうように腰を振った。  ちふゆの後孔に挿れている指も水音を立てながらピストンさせ、前立腺を刺激する。 「ああーっ、イくっ、ま、また、出ちゃうっ」 「いいよ。ちー。俺も合わせるから」  はっ、はっ、と息を弾ませながら、青藍も自分の欲望を高めていった。  ちふゆの足に、ピンとちからが入った。  そろそろだな、と察した青藍が、手と陰茎でちふゆのペニスをこすり上げたとき。  ちふゆの後孔がぎゅううっと(すぼ)まって、青藍の指を締め付けてきた。 「~っっっ!!」  声もなく、ちふゆが背を反らせる。  青藍の手が、ちふゆの放った精液で汚れた。    ちふゆの逐情に合わせて、青藍も達した。  放たれた白濁は、ちふゆのそれと交じり合い、腹部の辺りにどろりと垂れた。  ちふゆが忘我の表情で、天井を仰いでいる。    ふぅ、と大きく深呼吸をして、青藍は組み敷いていた小柄な体の上から退いた。  蜂巣(ハチス)に常備されている家具調のタオルウォーマーからホットタオルを取り出し、自身の下腹部をざっと拭うと、着物の裾を整え、新しいホットタオルを手にベッドへと戻る。  そのついでに床に散乱していた漫画本を拾い、ソファの上へと置いておく。    ベッドの上ではちふゆが胎児のように体を丸めて、両手で顔を覆っていた。 「ちー。なにしてんの?」 「恥ずかしいんだよバカっ」  指の隙間からじろりと睨まれて、青藍は思わず笑ってしまった。 「ちー、その恰好、お尻丸見えだけど」 「うるさいっ」  青藍の指摘に怒鳴り声を返しつつも、ちふゆが片手を顔から離してお尻のガードに回している。 「ははっ。ちー、こっちおいで。体拭いたげるから」  青藍がベッドの端に腰を下ろしてちふゆを手招きすると、フイっと顔を背けられた。  さっきまでミャーミャー鳴いていたのに、いまはツンツンだ。  そんな仕草までもが可愛くて、青藍は笑いながらちふゆを呼んだ。 「ちー。おいでってば」 「うるさいっ! 腰が抜けてんだよっ」  ちふゆが真っ赤な顔で、そう怒鳴る。  青藍は思わず、ばたりとベッドに倒れ伏した。    あんなちょっとした戯れで腰を抜かすとは……。  純粋培養すぎるちふゆの今後が心配になる以上に、その可愛さに青藍は悶えた。    「お、おまえっ、くそっ、笑うなっ」  青藍が体を震わせているのを、爆笑していると勘違いしたのだろう。  ちふゆが怒った声を聞かせてきた。      ちふゆと青藍がしたあの行為は、セックスではなくてただの前戯で。  まだ本番には至っていないことを教えてあげたら、この子はどんな顔をするのだろうか。  それを想像すると楽しくて。  ちふゆにすべてを教える役を、やはり誰にも譲りたくない、と青藍は思った。    この可愛い生き物を。  青藍だけのものにしておきたい。  ちふゆが他の男娼を指名しようなんて気にならないよう、自分に縛り付けてやる。  快楽でトロトロにして。  青藍に、縛り付けておくのだ。    青藍はそんなことを考えながら、ちふゆの短い金髪を撫でた。  怒ったような目と、困ったような短い眉に誘われるように、青藍はちふゆへと顔を近づけ……ちゅ、と触れるだけのキスをした。  ちふゆの白い肌に、血の色が透けて見えた……。       
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