憧れ

1/34
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/74ページ

憧れ

 テレビでは日夜ヤタガラスの報道がされていた。どうやら狙われた銀行は政界と太いパイプを持っていたようで裏金の保管場所として使われていたようだ。  このことが表面化し、政治家の数人がお縄になった。そして、ヤタガラスの世間での印象は悪から正義になっていた。  ネット上ではヤタガラスを讃える声が多く挙げられ、しまいにはヤタガラスをヒーローの様に扱うサイトが作られたようだ。  僕ら、SFTのメンバーはヤタガラスの情報収集を行い、また、トレーニングに勤しんでいた。 「あー。なにが正義の味方ヤタガラスよあんなのただの犯罪者じゃない」  ミドリが机にうなだれる。今日1日の情報収集とトレーニングを終え、心身共に疲労困憊しているようだ。 「そうだねー」  僕も同じように机にうなだれる。しかし、ミドリとは違ううなだれる要因がある。その原因はつい先ほどイアイに呼び出された件についてだ。  イアイの呼び出しの内容は兄貴、黒川ショウについてのものだ。イアイの話では兄貴の入隊直後の教育係をイアイが担当したそうだった。  それ以上でも以下でもなく唐突に消えた兄貴について何も知らないとのことだった。逆にイアイから兄貴について知らないか聞かれたが僕は何も答えなかった。先日のヤタガラスのイズミの話も黙っていることにした。  あの日、イズミが言っていたこと。奴の口から出た兄貴の名前。兄貴はヤタガラスの一員なのか。といったことが気になって仕方がないのだ。  兄貴は正義感の強い人間だった。犯罪なんてするはずがない。そう思ってはいるけれど正義の犯罪集団となるとあながち間違いではないような気がする。誰も傷つけず悪を倒す方法があるのならば、自ら犠牲になるものなのだろうか。僕の頭はこんがらがっていた。  
/74ページ

最初のコメントを投稿しよう!