カネ

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 普段のユイからは想像もできないような態度にただただ驚かされた。あんなに熱くなっているユイを始めて見た。いつもは温厚で何があっても怒鳴ったりなんかしない。ヘラヘラとしていて、いつもニコニコで誰にでも優しいユイの豹変ぶりに呆然とするしかなかった。 「あんたには見捨てられた気持ちがわかんのか!?裏切られた気持ちがわかんのか!?今、ツバキちゃんがどんな気持ちか考えて物言ってんのか!?」 「そこまでだ」  ユイを止めたのはハジメだった。ユイはハジメの声の方を振り返った。 「失礼しました。ユイ!行くぞ」  ハジメは岩波に頭を深々と下げユイを連れ出した。ユイはハジメに連れられその場を後にした。 「大変失礼しました」  イアイも岩波に頭を下げる。 「待て」  立ち去ろうとしたイアイを岩波がうつむいたまま低い声で制止した。岩波の声にイアイは立ち止まり岩波を真っ直ぐ見つめた。 「明日までにカネを用意する。ツバキを、頼んだぞ」  岩波はイアイを全く見ずにそう言った。まだ心のどこかでお金への執着を捨てられないのだろう。しかしながら、お金よりも命の方が、孫娘の方が大切なんだとユイのおかげで気付かされたように思えた。
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