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双子の幼女殺し
真昼に脳が若干浮いてる感覚。身体から一歩先んじて髄液をぷかぷか浮くような、締まらないポーッとした感じ、が、ここしばらく続いている。
気持ちのいいものではないけど、こう言う時ほど言語野の端っこから端っこまでが、不思議とするする繋がりやすい感覚を、ここしばらく体感している。脳のシワを一つ一つ丁寧に解いて手縫いマフラーをする感覚に近い。言語野はたしか左脳だがら、右脳とうまく結びつかないでほつれてホワホワ。そのホワホワ状が言葉になるのだ。言ノ葉、という表現は手垢がつきすぎて嫌いだ。パン粉でもみ消そう。そういえば心という内臓器官があればきっと繊維状に違いないと友達に話したことがあったっけ。モコモコが両足で散歩ホワホワ。彼女の軌跡を追うように不気味な造花が空に向けて燦々と。
脳は健常で心身が不調。不文律。調子が良いのに調子が悪い。
心労が多く疲労が大きい。イカンなー、など考えながら、作業の合間でポーッと街を歩いてる。
要は身体が脳に追いついていないワケだ。筋トレをしろなど、表皮を被った同調圧力が言う。動悸が首を横に振るのでノー。アニメとか話題の映画でも適当に観ていてくれ。
そんな追いつかない自身の半身を追いかけ続けるような、ビミョーな精神状態の最中、ふらりと御茶ノ水に立ち寄った。言わずもがな楽器街。そう言えばいつかまたギターをやろうとポツポツ漏らしてた。いつかっていつだ。先か? 先とは?今の先とは? 土に還って墓標を舐めとる感覚性。お金は墓場まで持っていけない。じゃ買おう。そう思って数多ある楽器店を順当に回っていった。
ギターを弾いていたのは7年も前だ。最初からやり直す気概、素人の心意気でいた。取り敢えずレスポールで、ボディはグリーン。鬱蒼と生い茂り、逃げ惑う同調圧力を頭からムシャムシャと食べてしまえるようなトリフィド時代の食虫植物が如くグリーンを。双子の幼女殺しの冤罪で閉じ込められしかし本当は誰よりも優しく人の傷を癒す力を持ったジョン・コーフィが死刑執行を前に最期に歩いたグリーンマイルが如くグリーンを。
ジョン・コーフィ。君はやさしい。その巨躯の中にはテディーベアーが如くぎっしりと真綿が詰まっていたことだろう。生きていたならば幼女二人はバタフライの腹部なぞ比べ物にならない柔らかさにさぞ喜んだことだろう。
ジョン・コーフィ。いつか君のことを歌にしよう。物語でも良い。君は同調圧力に殺された。その不文律さを歌おう。方角はどっちだ、アイラインに塗られた自転車道は今日もグリーンに輝いている。ならばここにいたとて君のことを想い歌えるだろう。植え歌おう、さらばモコモコなる犠牲者。皆が気づかずとも僕だけは本当の君を偲び続けた。
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