隣のヒト

4/113
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/281ページ
たくさん話をして、川村さんはもう一軒誘ってきたけど断った。 飲み屋で適当に楽しむことに、興味もない。 仕事の付き合いで行くくらいだ。 電車を降りて、アパートまでの道を歩きながら考える。 熱しやすく冷めやすい自分。 付き合った相手とはいつもそれで失敗している。 「こんなはずじゃなかった」って言われて振られている。 そして、その相手のことを追うこともなかった。 恋愛に向いてないんだよなぁ…。 ま、いいけど。 アパートに着くと、女性が一人エレベーターを待っていた。 デニムに薄黄色のシャツ。 肩より少し長めの髪を後ろで黒いゴムで結んでいる。 会社帰りのOLではなさそう。 エレベーターが来て乗り込むと、「何階ですか?」と聞かれた。 「その階なんで大丈夫です。」 とだけ答え、エレベーターが5階に着くと、その女性が開閉ボタンを押し続けてくれていた。 「ありがとうございます。」 そう言ってエレベーターを降りると、後ろから足音がした。 同じ方向か。 そして俺は自分の部屋の鍵を取り出していると、足音は俺を通り越して隣の角部屋で止まった。 鍵を開け、ガチャッとドアを開き部屋に入ろうとしたとき、俺はチラッと隣を見て部屋に入った。 靴を脱ぎ、スーツの上着をソファーの背もたれにバサッとかけ、ソファーに座った。 隣の人、あーゆー人だったんだ。 歳は多分俺より上。 背は150センチくらい。 顔は、普通。 そして何より、いつも楽しそうに笑ってる人。 また声出して笑うのかな。
/281ページ

最初のコメントを投稿しよう!