君のこと

隣のヒト

住田誠(スミダマコト)26歳、会社員。
一人暮らし。
趣味、休日に寝ること。
彼女、いない。

毎日毎日仕事して、ノルマ達成したあとは手を抜くことも覚えたりなんかする。
あんなに悶絶した新人時代が懐かしい。
要領さえ覚えれば、慣れたもんだ。

季節はもう初夏を迎えた。
少しばかり慌ただしくなった時期も過ぎ、アパートに帰って来た俺は、シャワーを浴びてから部屋着に着替えてタバコを吸いにベランダに出た。

「ふっ……くっくっくっ…！」

……やっぱ気のせいじゃないんだな。

この季節になり、初めて聞いた笑い声は気のせいかと思っていた。
しかも女。
多分窓が開いているんだろう。
時々タバコの匂いもする。

楽しそうだよなぁ…。

俺はいつからか、女の笑い声を聞いているうちに口元がゆるんでいた。