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あれ以来、私は賢者の石を求めて錬金術師のパトロンになる事に決めた。賢者の石を持つ者が、その作り方を教えられないというのならそれを再現できる人材を育成しようと思ったのだ。
何人もの錬金術師を抱えて、定期的に報告を入れさせる。賢者の石が出来上がったという報告はまだ一件も無いけれど、その代わりになるのだろうか、今まで知られていなかった、自然に関する知識が沢山報告された。
私は、そう言った情報にも報奨金を出した。
錬金術師達が持ってくる新しい発見を書物にまとめ、領内の各所にある図書館にいれるだけでなく、希望があれば自然科学者の元にもその本を与えた。
新しい知識は、僅かずつとはいえ人々の生活を善くしているように見えた。
そう、知識を得られるだけでも錬金術師を支援するに十分な見返りで有り利益だ。けれども、いつまでも賢者の石が作り出されないことには時折苛立ちを感じた。
ある日、ひとりの錬金術師がこう訊ねた。
「賢者の石を求めて、黄金が欲しいのですか?」
それに対してこう答える。
「多すぎる黄金は経済を狂わせ、いずれ国を滅ぼす」
これはかつて、ハスターにも言った言葉だ。
私の言葉をきいた錬金術師は少し考える素振りを見せてから口を開きかける。けれどもすぐに口を噤んだ。
もしかしたら、彼は私が賢者の石に求めるものを察したのかも知れない。私はつとめてやさしい口調で言葉を続ける。
「賢者の石は、国益に繋がります」
そう、賢者の石があれば病を癒やす事も出来るだろうし、何より不老不死を得ることも出来るだろう。私が欲しいのは、不老不死なのだ。
そこまで考えて、ふとハスターのことを思い出す。
彼は今どうしているのだろう。初めて会ったあの時と同じような姿で今もいるのだろうか。もう一度会えば賢者の石の作り方を教えて貰えるのだろうか。
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