5373人が本棚に入れています
本棚に追加
/561ページ
「子供たちの為?」
私は小さく頷いた。
今日は、ゴールデンウィーク最終日で、最高の行楽日和。三日前の大雨とは打って変わって、窓から差し込む日差しは夏の熱を匂わせる。
私は立ち上がり、バルコニーの窓を少し開けた。フワッとレースのカーテンが舞う。
「真心ちゃんが生まれた時に、旦那さんが言ったそうよ。『夏子の両親だけが、真心のおじいちゃんとおばあちゃんだから、可愛がってもらいたい』って。自分と夏子に何かあった時、真心ちゃんを守ってくれるのは誰かって考えたりしたみたい。それで、夏子からご両親に連絡を取るようになったって」
「そんな、予測できない将来のことを――」
「両親を亡くして独りになる寂しさを知っているから、心配になったんでしょう? 夏子の旦那さん」
智也は納得がいかないようで、口をへの字にして顎に皺を寄せている。
「けど、一昨日のことで、自分たちの都合に智也を巻き込むことはしないって決めたんだって」
「は?」
「真心ちゃんと勇気くんの存在が、智也とご両親の関係を修復するきっかけになればって思って、智也とご両親を会わせたみたい。旦那さんは、智也を騙すようなことは反対したみたいなんだけど、夏子はどうしても直接話をしてほしかったみたいで。けど、ご両親の――というか、お母さんの智也への言動や、智也の反応を見て、関係の修復は無理だって踏ん切りがついたって。もう、こんなことはしない、って言ってたよ」
最初のコメントを投稿しよう!