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「智也、包丁の置き場所変えた?」
金を払ってリビングに戻ると、聞かれた。
「包丁? 俺は――」
『変えてない』と続けようとして、思い出した。
どうする。
「なんか……、切るもんあったか?」
「ピザ、四枚にしか切れてなくて。忙しくて、切り忘れたのかな」
よりによって、こんな時に!
嘘だろ、と思いながらダイニングテーブルの上に置かれたピザを凝視する。確かに、二枚とも十字にしかカットされていない。
彩が注文したのは、チーズのみのと、サラミとトマトのと、照り焼きのと、シーフードの。それぞれハーフ&ハーフでLサイズが二枚。
Lサイズのピザを四つ切のまま食べるのは、さすがにナイ。
俺は観念して、食器棚の一番上、一番奥に隠した包丁を取り出した。
「なんで、そんなところに?」
『ぶった切られないように』なんて言えるはずがない。
俺は何も言わずに包丁を彩に渡し、冷蔵庫を覗いた。コーラを二本、取り出す。
「もしかして、私が――」
「言うな!」
背後で、彩の笑い声が聞こえた。
「あはははは……! 私が包丁持ち出すとでも思ったの?」
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