2 嫉妬

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 とても、先輩後輩の会話とは思えなかった。いくら新人時代の指導係だったとはいえ、ここまでフランクになれるものだろうか。  そんなことを考えていたから、千堂課長と一緒に冨田課長の噂話を聞いてしまった時、言ってしまった。 『溝口さん、新人の頃は冨田課長に指導を受けていたらしいですよ。その後も一緒に仕事をしたことがあるみたいだし、噂のことも知っているかもしれません』  私は、ズルイ。  弱っている千堂課長につけ込んで、智也の反応を見た。  智也と冨田課長に『過去』があるのなら、千堂課長が気づくはず。そう思って、千堂課長が智也を飲みに誘った時、行くように促した。  けれど、そんな風に試すようなことをして、平常心でいられるほど強くなくて。スーパーを三周しても何を作ろうか決められず、結局、一番無難な鍋にしてしまった。  帰って来た智也の様子を見れば、ちゃんと私を想ってくれていることはわかるのに、それでも不安が拭えなくて、よりによってベッドで拒絶してしまった。  その前からだ。  シャワーを浴びている時は、保湿クリームを塗らなきゃと思っていたのに、ふっと冨田課長の姿を思い出して、忘れてしまった。  冨田課長のスカートから覗く足は細くて長くて、膝も白くて綺麗。  私なんて膝は違う意味で白くて、いつのものかわからない青痣もある。  子供たちが小さい頃、プラ〇ールに夢中で、よく膝をついてレールを繋ぎ合わせた。時々、レールの上に膝をついたり、夢中になりすぎてドアに足をぶつけたりもした。  子供を膝に抱いていて、脛を蹴られたこともある。転びそうになった子供を庇って膝をつき、ジーンズに穴を開けたこともある。
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