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3 誰もが持つ裏の顔
『冨田が料理!?』
電話の向こうで、智也が声を弾ませた。
『明日、会社が倒産したら、冨田のせいだな』
「なんてこと言うのよ」と、私はわざとらしく語尾を強めて言った。
「せっかく課長がやる気になってるのに」
『けど、冨田が爪を切って色を落とすとは思えないな』
「……」
実は私も同じ。
挑発的なことを言ってみたけれど、本当に課長が爪を切るかは、わからない。
『ま、料理はともかく、色々と考えるきっかけにはなるだろ』
「だといいけど……。っていうか、どうして私が智也と課長のことを疑ってたとか話すかな。それも、課長から聞かされて焦ったじゃない」
『あー……、それ。昨日、冨田から電話があった後でお前に話そうと思って電話したけど、出なかったろ』
今日から荻野さんの指導係になるにあたって、片付けておく仕事に追われていた。それが、ようやく落ち着いて、昨日は早々に眠ってしまった。
寝る前に『おやすみ』とメッセージを送ったけれど、恐らく課長と通話中だったのだろう。
『飲んだ時、千堂が彩の手料理が羨ましいって言ってたんだよ。だから、冨田に『とりあえず胃袋を掴め』って言ったんだよ。『俺も最初は彩の飯に惚れたんだ』って。素直にアドバイスを聞くとは思ってなかったけどな』
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